日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

2018-01-01から1年間の記事一覧

天正18年7月19日小貫頼久宛嶋清興書状(部分)を読む???

旧聞に属するが、嶋左近の書状を読んでみたい。 www.shikoku-np.co.jp (折紙) (折封ウハ書) 「小大蔵*1殿 御陣所」 (前略) 申候て見可申と被申候を 先可被仰出是も御分 前次第□(候)先々家中へハ 用意之儀急度被申越 候て可然と申候よし然者更ニ 昨夕…

ジビエとしてのカワウソ

小動物として大人気のカワウソだが中近世では食用とされていたらしい。 永禄11年2月10日『大日本古文書 益田家文書之二』344号文書には次のように見える。 於藝州吉田御一献之御手組 初献 御引渡 御湯漬 しほひき*1 ふくめたい*2 かいあわび*3 さかひて*4 か…

参勤交代と「一所懸命」

「一所懸命」とは文字通り「一所」=土地を守るために、命を懸けることを意味する。 主君から土地を与えられることを「御恩」といい、それに対して主君の命にしたがうことを「奉公」という。この双務的関係を西洋史にならって「封建制」という。これは郡県制…

文久元年9月16日幕領村々名主中宛皇女和宮下向につき触書写を読む 「写」の構造

前々回読んでみた文書は写であるが、二重の写である可能性が高い。写真が「部分」なので断定はできないものの、どの部分が「本体」で、どの部分が書き加えられたものか、少々考えてみたい。 japanesehistorybasedonarchives.hatenablog.com まず「本体」にあ…

元治元年10月6日村田氏寿宛坂本龍馬書状をちょっと読む???

digital.asahi.com https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20180823003625.html へも御存知候と 成被下度希候 恐〻頓首 十月六日 〻 (龍馬花押) 村雅兄 足下 (書き下し文) ・・・へもご存知候と、なし下されたくのぞみ候、恐〻頓首〻 ちなみに龍馬…

文久元年9月16日幕領村々名主中宛皇女和宮下向につき触書写を読む

国立公文書館発行の『アーカイブズ』69号にも和宮下向の文書が掲載されているので、前回との関連で読んでみることにしたい。 国立公文書館 | 情報誌:アーカイブズ なお「明治維新150年記念」に関する各県の取り組みの解説がいくつか掲載されているが、読み…

古文書調査は楽しいな ((o(´∀`)o))ワクワク

mainichi.jp 古文書調査はまだ誰も見たことのない文書を見ることができる唯一の機会である。もちろん、目録を作成してあらゆる人が利用できるようにすることが調査の目的であり、つまみ食い的に「活用」するためではない。また所蔵者へ敬意を払うことも忘れ…

年未詳12月29日村上景親宛毛利輝元書状を読む???

mainichi.jp (折紙か) 為歳暮之儀 青銅百疋并 蠣一桶到来 祝着之至候 猶明春慶事 可申候恐々謹言 極月廿九日 (花押)*1 村三郎兵*2 (書き下し文) 歳暮の儀として青銅百疋ならびに蠣一桶到来し、祝着の至りに候、なお明春慶事申すべく候、恐々謹言、 (…

年未詳2月28日後藤勘兵衛宛加藤清正書状を読む???

加藤清正、虎皮贈られ礼状 京都の豪商伝来文書から発見 : 京都新聞 headlines.yahoo.co.jp (折紙) 為年頭之祝儀差上使者殊為音信虎皮一枚大皿十相届祝着之至候猶下川兵大夫可申候謹言 二月廿八日清正(花押) 後藤勘兵衛*1とのへ (書き下し文) 年頭の祝…

文禄2年閏9月24日虚言を弄し、桝の礼銭を取る者を捕縛す

(前略) 一、高嶋郡*1ニ而かり言*2申者共高嶋より四人、京ニ而四人搦捕南惣門籠ニ入、 (中略) 一、高嶋之内下北川藤右衛門入道桝之儀、かり言仕、郡中ゟ礼*3を取、此方両人*4下代之由申触候付、搦取申候、御奉行被下様子可被聞召届候、関白様*5還次第得御…

慶長3年6月2日筑前国早良郡脇山三郎左衛門・庄屋百姓中宛謀書状写を読む

尚以御朱印高札ニ書載村々立置儀候て可聞此旨候以上 急度申遣候仍両筑*1之内今まて中納言殿*2御蔵納*3御給地*4之分太閤様御蔵入*5ニ被仰出付て石田治部少輔殿為御代官*6被成下着之由候然者田畠毛付不残可申付候若又給人衆未進方さひそく被仰共不可出候此上竹…

慶長3年6月22日筑前国志摩郡在々宛石田三成掟書写を読む

条々一、来秋執納之事、田不苅以前ニ代官見及、其田々ニより見そん*1ニ可仕事、一、めんあひ*2百姓と代官ねんちかい*3の田畠有之者、何も苅分*4ニいたし三分壱作徳遣、三分弐可運上事、一、納様之事者、年貢持て来其百姓不寄上手下手*5あげて*6はかり、壱石…

慶長4年1月15日筑前国志摩郡宛小早川秀秋定書を読む

定 筑前国志摩郡一、去年越前へ国替之刻、侍中間人足*1以下対主人給人不相届族雖有之無其改其科令宥免之事、一、諸給人未進借銭執沙汰一切有間敷事、一、当作毛之儀其所之奉行之者令相談急与可致開作濃(ママ)料*2之儀者可借遣之事、一、山林竹木雖先代官不…

慶長3年5月22日大音新介宛石田三成判物を読む

(切紙)*1 (端裏封ウハ書) 「大新介*2参 治少*3」 以江州しょむかた*4の事大事ニ候、以上 態申遣候、仍我等内々ハちくこ*5・ちくせん*6被下、九州物主*7ニ被遣候ハんとの事ニ候つれ共、さ候へハ、又さわ山*8にをかせられ候ハん人もなく、こゝもとニて御用…

天正14年羽柴秀長、検地施行時「不正」をはたらいた大和国庄屋衆37人に牢舎を命じる

一、去年検知*1ニ礼*2ヲ仕タル曲事トテ、国中庄屋衆卅七人籠者*3了ト、 天正15年8月2日『多聞院日記』 (書き下し文) ひとつ、去年検地に礼をつかまつりたる曲事とて、国中庄屋衆卅七人籠舎しおわんぬ、と、 (大意) ひとつ、昨年の検地において、検地役人…

年未詳8月23日今井清右衛門尉宛石田三成判物を読む

免相*1之事ハ、嶋左近*2・山田上野・日岡帯刀両三人ニ申付候、右之三人之儀勿論誓詞*3之上可為順路*4候間、任其旨可相納候、三人方へも右之趣申付候也、 八月廿三日*5 三成(花押) 今井清右衛門尉殿 長浜城歴史博物館『石田三成と湖北』55頁 (書き下し文)…

慶長2年4月20日上八木村百姓中宛石田三成黒印状(田方麦年貢掟)を読む

(三成朱印)当なつより、しよこくむぎ年貢、田方三分壱納可申旨、御意*1ニ付而、可納やう、又おさむまじき田畠之免之事、 一、田にむぎまき*2申分ハ、其田/\の麦毛のうへにてミおよび、三分壱きう人*3ニ納をき、すなはち其地下にくら*4に入、あつけおき*5…

文禄5年3月1日石田三成十三ヶ条村掟を読む その13/止

一、めんの儀にいたつてハ、秋はしめ田からざるまへに、田がしらにて見およひ、めんの儀あひさだむへし、もし百性と代官と、ねんちがいの田あらば、其村の上中下三だん*1に升づき*2をせしめ、免の儀さたむへし、なをねんちかいあらは、いねをかり、三つにつ…

文禄5年3月1日石田三成十三ヶ条村掟を読む その12

一、ねんぐ*1おさめやう*2の事、壱石ニ弐升のくち米*3たる也、百性めん/\*4にあげに*5はかり*6、ふたへたわら*7にして、五里のぶんは百性もちいたす*8べし、五里の外ハ百姓のひま*9に、はんまい*10遣候て、もちいたさせ可申候、此外むつかしき事あるましき…

文禄5年3月1日石田三成十三ヶ条村掟を読む その11

一、何事によらす、百性めいわく*1仕儀あらば、そうしや*2なしに、めやす*3をもつて、にわそせう*4可仕候、如此申とて、すちなき*5事申あげ*6候ハゝ、きうめい*7のうへ、けつく*8其身くせ事たるへく候間、下にてよくせんさく*9申て可申上候事、 (書き下し文…

永禄9年10月20日米田貞能奥書を読む???

this.kiji.is https://www.yomiuri.co.jp/photograph/news/article.html?id=20180803-OYT1I50017 右一部明智十兵衛尉高嶋田中 籠城之時口伝也 本ノ奥書如此 此一部より沼田勘解由左衛門尉殿大事 相伝於江州坂本写*1之 永禄九 拾 廿日 貞能(花押) ニキリク…

文禄5年3月1日石田三成十三ヶ条村掟を読む その10

一、もし此村、給人づきに成候*1ハゝ、さいぜん*2より給人の村へつかハしをき*3候法度書*4をもちい*5、これハほんご*6たるへき事、 (書き下し文) ひとつ、もしこの村、給人付きになりそうらわば、最前より給人の村へ遣わし置き候法度書を用い、これは反故…

文禄5年3月1日石田三成十三ヶ条村掟を読む その9

一、ぬか*1わら*2以下ニいたるまて、我等用所*3候て、代官より取儀あらば、少なりともさん*4無用ニ不相立候ハゝ、めやす*5にて可申上候事、 (書き下し文) ひとつ、糠・藁以下に至るまで、われら用所候て、代官より取る儀あらば、少なりとも算無用にあい立…

文禄5年3月1日石田三成十三ヶ条村掟を読む その8

一、何たる儀によらす、よ*1の村の百性はしり*2、当村へまいり*3候をかゝへ*4候ハゝ、そのやとぬし*5の事ハ申ニおよバず、地下中くせ事*6ニせしむへき間、かねてそのむね*7を存、よの村の百性かゝへ申まじき事、 (書き下し文) ひとつ、何たる儀によらず、…

文禄5年3月1日石田三成十三ヶ条村掟を読む その7

一、小田原御ぢん*1の年より以後*2、ざい/\*3の百性地下を出、ほうこう人*4・町人・しよく人*5に成申やから候ハゝ、あり*6所をきゝ*7、すなわち代官ニ申候て、我等へ可申上候、御はつと*8の事候間、とり返し可申候、但、家中ニ候ハ、くるしからす*9候、よ*…

文禄5年3月1日石田三成十三ヶ条村掟を読む その6

一、来秋より、只今遣す我等判*1の升にて取やり*2仕、ふる升もちゆへからす、先年けんち衆いだされ候升ニふときほそき*3ある間、とりあつめ、そのなかにて中をとり、ため*4あわせ*5つかハし*6候事、 (書き下し文) ひとつ、来秋より、ただいま遣わす、われ…

文禄5年3月1日石田三成十三ヶ条村掟を読む その5

一、出作にあき*1候とて、申たき*2まゝ*3に申なし、田地をあげ*4候事くせ事*5たる也、又当村の田地をよ*6の村よりあげ候とも、是又あげさせ申ましき事、 (書き下し文) ひとつ、出作に空き候とて、申したきままに申し為し、田地を上げ候こと曲事たるなり、…

文禄5年3月1日石田三成十三ヶ条村掟を読む その4

当記事以降は、翻刻の誤植などは煩雑になるため、断らずに改めた。 一、蔵納*1田地、きう人がたの百性作り候ハゝ、壱石に壱升の夫米いたすへし、又給人かたの田地、蔵納の百性つくり候ハゝ、夫米壱石ニ弐升あて*2いたす*3へし、しぜん*4此村へ入作多候て、夫…

文禄5年3月1日石田三成十三ヶ条村掟を読む その3

一、田はた*1さくしき*2の儀ハ、此さき御けん地*3の時けんち帳*4にかきのり*5候者のさばき*6に*7つかまつり、人にとられ候事も、又むかし我かさくしきとて、人のをとり申事もちやうじ*8の事、 (書き下し文) ひとつ、田畠作職の儀は、此前御検地の時、検地…

文禄5年3月1日石田三成十三ヶ条村掟を読む その2

一、地下ありきにいたツて*1、代官下代*2やとい申事あらバ、そのさい所*3里どなり*4なと*5へは*6、やとハれ可申候、それも作*7にさしあひ*8いらさる儀ニめしつかい*9候ハヽ、いたし*10申ましき事、 (書き下し文) ひとつ、地下歩きに至って、代官・下代雇い…