一、めんの儀にいたつてハ、秋はしめ田からざるまへに、田がしらにて見およひ、めんの儀あひさだむへし、もし百性と代官と、ねんちがいの田あらば、其村の上中下三だん*1に升づき*2をせしめ、免の儀さたむへし、なをねんちかいあらは、いねをかり、三つにつミわけ、くじとりニいたし、二ぶん代官へとり、一ぶん百性さくとくにとるへく候、如此さたむる上ハ、代官ニみせすかり取田ハ、めんの儀つかハし申ましき事、
右十三ヶ条如件、
文禄五年
三月朔日 治部少(花押)
(書き下し文)
ひとつ、免の儀に至っては、秋初め田苅らざる前に、田頭にて見及び、免の儀あい定むべし、もし百性と代官と、念違いの田あらば、その村の上中下三だんに升づきをせしめ、免の儀定むべし、なお念違いあらば、稲を苅り、三つに積み分け、くじとりに致し、二分代官へ取り、一分百性作徳に取るべく候、かくのごとく定むる上は、代官に見せず苅り取る田は、免の儀遣わし申まじきこと、
(大意)
ひとつ、年貢減免は秋の初めに田を刈り取る前に、よく作柄を見て減免率を決めなさい。もし百姓と代官のあいだに認識が異なる田があれば、その村の上田・中田・下田の三段に分けて作柄を量り、減免率を定めなさい。それでもなお百姓と代官が納得しない場合は村全体の稲を刈り取り、三つに積み分けて、くじを引きなさい。3分の2を代官が、残りの3分の1は百姓の作徳としなさい。このように定めたので、代官に作柄を見せずに刈り取った場合は年貢減免はしない。
風損、水損、虫損など天災が原因で不作になったさいの年貢減免について定めたものである。田を刈り取る前に作柄を見た上で、百姓と代官が相対で決めるように、という内容である。三成の蔵入地であるにもかかわらず、彼自身はかかわっていない。
「升づき」を『日本国語大辞典』は次のように解説する。
田畑の各筆(ひつ)の上・中・下の等級を決めて、一村の収穫高を算出し、これと高とを比べて田租の割合を決めること。
*池野文書‐東浅井郡志四・文祿五年〔1596〕三月一日・石田三成落村掟「一ねんぐのおさめやうの事、田刈らさる前に、田頭にて見はからひ、免之儀相定むべし。若給人、百姓ねんちがひの田あらば、升つきいたし、免定め可申候」
*歌謡・踊唱歌〔17C後〕御伊勢踊「今年や世の中稲の桝づきしてみたら、稲は三束、米は五斗五升五合つく」
"ます‐づき【升〓】", 日本国語大辞典, JapanKnowledge,
https://japanknowledge.com , (参照 2018-08-04)
この説明では、田畑の上中下ごとに村全体の収穫高を量り、年貢率を定めることを「升づき」の意味とするが、これでは前後も含む説明になるので、上記のように解釈した。
「御伊勢踊」も「稲を升づきしたら、稲3束が米5斗5升5合になった」とあるように、「作柄を確かめること」という意味と理解するのが妥当であろう。