日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

文禄5年3月1日石田三成十三ヶ条村掟を読む その11

 

 

一、何事によらす、百性めいわく*1仕儀あらば、そうしや*2なしに、めやす*3をもつて、にわそせう*4可仕候、如此申とて、すちなき*5事申あげ*6候ハゝ、きうめい*7のうへ、けつく*8其身くせ事たるへく候間、下にてよくせんさく*9申て可申上候事、

 

(書き下し文)

ひとつ、何事によらず、百性迷惑つかまつる儀あらば、奏者なしに、目安をもつて、庭訴訟つかまつるべく候、かくのごとく申すとて、筋なきこと申し上げそうらわば、糺明の上、結句その身曲事たるべく候あいだ、下にてよく詮索申して申し上ぐべく候こと、

 

(大意)

ひとつ、理由を問わず百姓が困窮するようなことを蒙ったならば、取次者を通すことなく、目安を持参して、越訴しなさい。このように申したからと言って、筋違いの訴訟をしたならば、よく調べた上で、訴え出た者を曲事とするので、村でよく調べた上で訴え出なさい。

 

 

 

 

「下にてよく詮索申して」とあるように、村が下請団体として機能していたことが分かる。団体として機能するためには、それだけの読み書き能力が村にあったことを前提とする。

 

また、「奏者なしに」とあるように、代官の非違を代官やその手代などに訴え出ても、黙殺されることがしばしばあったのだろう。そのような場合は直接訴え出る「庭訴訟」という手段をとるように指示している。

 

その一方、「筋なきこと申し上げ」る者も頻出したのだろう。

 

*1:迷惑

*2:奏者

*3:目安

*4:庭訴訟:庭は役宅の意、つまり三成の執務する役所へ直接訴え出ること

*5:筋なき

*6:上げ

*7:糺明

*8:結句

*9:詮索