日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

文禄5年3月1日石田三成十三ヶ条村掟を読む その9

 

 

一、ぬか*1わら*2以下ニいたるまて、我等用所*3候て、代官より取儀あらば、少なりともさん*4無用ニ不相立候ハゝ、めやす*5にて可申上候事、

 

(書き下し文)

 

ひとつ、糠・藁以下に至るまで、われら用所候て、代官より取る儀あらば、少なりとも算無用にあい立てずそうらわば、目安にて申し上ぐべく候こと、

 

(大意)

 

ひとつ、糠・藁以下に至るまで、必要があり、代官より徴収することがあれば、少量であろうとも算木無用といって使わないことがあれば、目安にて注進しなさい。

 

 

 

糠藁は馬の飼料で、「われら用所候て」は軍事上の必要を意味する。この十三ヶ条が「唐入り」と無関係でないことを物語る。

 

目安とは訴状のことである。もともとは、本文書のように「一、・・・事」と書く「事書」形式を意味したが、次第にそのような形式をとらない上申文書も目安と呼ぶようになった。

 

この目安をもって注進せよという文言からは、当然村に読み書き能力を持つ者が在住していることを前提とする。また、このような文書によって行政を行っていることもまた同様である。

 

逆に在地にこうした読み書きそろばんの能力を持つ者がいれば、広域的な支配=行政を効率的かつ公正に行うことが可能となる。

 

 

*1:

*2:

*3:ようじょ:使い途、用いる場所

*4:算:算木、そろばんの可能性も

*5:目安