日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

近世初期検地帳に見る百姓のおなまえっ!

天正から文禄年間にかけての近世初期検地帳を眺めていると、ときどき偉そうな名前を名乗っている百姓に出くわすことがある。 Fig.1 文禄3年10月摂州[虫損]郡椎堂村御検地帳 文禄3年「椎堂村検地帳」 イには「とくら 惣作」、ロは「同ノ 彦衛門尉」、ハは「…

「鎌倉時代から姓を名乗るのをやめ、名字のみになった」のか?

先日名前に特化したバラエティー番組を見た。そこで「平安時代に姓と名前のあいだにある「の」が、鎌倉時代には名字を名乗ることにより消えた」という話を聞いた。バラエティー番組に対して大人げないとは思うが、史料的にはむしろそうでないことを示す例が…

ファイリングされた文書「綴」 「戦死屍仕末金諸入用帳」について

古文書は形態により、折紙、竪紙、続紙などの一紙もの(「状」と呼ぶ)と竪冊(竪帳とも)、横冊(横帳とも)、横半帳などの冊子体(「冊」、「帳」などと呼ぶ)に大きく分けられる。後者の冊子体はあらかじめ冊子にしたあとで書き込むもので、当然記載に過…

天正10年6月10日溝口半左衛門尉・同久介宛柴田勝家書状を読む???

新発見勝家書状の続報である。 www.msn.com 全体 切紙を糊で貼り継いだ続紙 イ「五郎左」=丹羽長秀 ロ「明知」=明智光秀 ハ「上様」=織田信長 傍線部①には「昨日九日至越前北庄江令帰陣候」、「昨日九日、越前北庄へいたり帰陣せしめ候」とあり、天正10年…

新発見の柴田勝家書状の注目すべき保存状態

また文書の新発見があった。 www3.nhk.or.jp 今回は文書の伝来と形態について述べてみたい。 古代・中世の文書は掛け軸などに表装されていることが多く、必ずしも原形を現在に伝えているとはいえない。骨董市場に出回る物も多くが表装されており、なかには天…

天正13年5月4日黒田孝高宛羽柴秀吉朱印状を読む

2014年NHK大河ドラマ特別展「軍師官兵衛」展示図録、93号文書、90頁 (折紙)急度申遣候仍長曽我部為成敗至尓四国来月三日此方*1出馬渡海候成其意*2其以前も為先勢淡州*3へ可有着岸候聊不可有由段者也 五月四日*4 秀吉(朱印) 黒田官兵衛尉殿 (書き下し文…

正徳6年5月3日長井又兵衛宛木津伊之助起請文を読む?

www.chunichi.co.jp www.yomiuri.co.jp www3.nhk.or.jp (竪紙) 敬白天罰灵*1社起請文前書 一、今度御流儀忍術御伝授忝奉存候然者御 相伝之忍術忍器共ニ喩親子兄弟たりと いふ共他見他言仕間敷候尤知ぬ躰ニもてなし*2 人ニ写させ申間敷候 一、萬川集海*3之…

萬暦19年8月21日島津義久宛尚寧王書状を読む

国立歴史民俗博物館図録『日本の中世文書』6-16号文書、176頁 (竪紙) 今春直林寺*1為使節下向無恙上着*2候 哉然者為関八州追伐之祝儀*3今度紋船*4 令渡海万端可然之様御調達憑入*5候国 家*6衰微之間雖不献方物*7表楽人*8等之 儀式為使節差上建善大喜和尚茂…

天文12年9月24日石雲寺宛北条長綱朱印状を読む

http://www.city.isehara.kanagawa.jp/docs/2018102900096/file_contents/181101-4-5.pdf (折紙) 任虎印判*1旨 伝*2役諸役其 外横合*3令停止 并竹木以下違 乱於申懸者急度 可申越者也仍 如件 天文十二(朱印) 九月廿四日 石雲寺*4 (書き下し文) 虎の印…