日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

石田三成島津分国検地掟写を読む その3

以下の記事の続きを書いてみる。

 

japanesehistorybasedonarchives.hatenablog.com

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(四条目)

一、藪之事、其藪々々とし々々十分一きり十分一之内を藪主十分一可遣之候、 たとへ百本在之やぶて、一年竹拾本きり九本公方へ上り、一本藪主とり、九拾本立置分相定、可書付事、

 

(書き下し文)

一、藪のこと、その藪その藪にて、としどしに十分の一きり、十分一のうちを藪主に、十分の一これを遣わすべく候、 たとえば百本これあるやぶにて、一年に竹拾本きり、九本は公方へ上り、一本藪主とり、九拾本は藪に立ち置く分にあい定め、書き付くべきこと、

 

*其藪々々、とし々々:宮川著書では踊り字は「くの字点」。二文字ずつの繰り返しは本来「くの字点」を使うが機種依存文字である上、縦書きにしか使えないので「々々」で代用した。ひらがなの踊り字は「ゝ」なので「としとし」は「としゝゝ」で代用すべきところだが、煩雑なため上述の様にした。

なお、踊り字については以下を参照されたい。

www.wikiwand.com

 

Wikipediaに「二の字点」の記述もある。厳密には「々」と「二の字点」は区別され、活字もそれぞれ用意されているが、戦後は「々」に統一される傾向があり、もはや絶滅しつつある。

 

http://www.ninjal.ac.jp/publication/catalogue/kokken_mado/04/03/mado04_03_01.jpg

http://www.ninjal.ac.jp/publication/catalogue/kokken_mado/04/03/mado04_03_01.jpg

www.ninjal.ac.jp

https://www.sanseido.biz/DispRes.aspx?fi=d82f1904-583a-423f-8318-74cad01cc734

 https://www.sanseido.biz/DispRes.aspx?fi=d82f1904-583a-423f-8318-74cad01cc734

 

なお、ATOKでは「おどりじ」で変換すると、「々」のほかに「ゝ」「ヽ」などが候補に挙がる。

 

(大意)

 

 ひとつ、藪のこと、その藪その藪において十分の一だけを伐採し、そのさらに十分の一を藪主に渡すようにしなさい。たとえば百本あるやぶでは、一年に竹を10本だけ切り、そのうち9本は公方へ納め、残りの1本を藪主の分とする。90本は藪に残すようにし、帳面に記載しなさい。

 

藪は薪をはじめとする様々な資源が取れる場所である。ここで豊臣家へ納めるものと藪の持ち主の取り分を9:1とし、さらに毎年伐採する割合を1割に決めており乱伐を禁止している。「藪主」がひとりの地主を意味するのか、それとも入会地とする村々のことか明らかでないが、いずれにしろ秀吉による介入が見られる。

 

前回も触れたが、秀吉は米だけで満足することはなかったようである。