(見せ消ちは取り消し線で示す)
おもきて
一、足さすり*1候とき、いたか*2なるてい*3をし候物ニおいてハ、ふちふち*4十石かへさせ可申事、
一、秀吉・お祢ゝ*7ニくちこたへ*8候ハヽ、いちにち一やはしり*9可申事、
以上、
天正十三年十一月廿一日 てんか*10
『秀吉文書集二』1757号、289頁(書き下し文)おもきて
一、足摩り候とき、居高なる躰をし候者においては、扶持扶持十石替えさせ申すべきこと、
一、湯殿裏への供番替わりたるべく候こと、
一、秀吉・おねねに口答えそうらわば、一日一夜走申すべきこと、
以上、
(大意)掟一、足を摩るとき、態度の大きいものは扶持米十石取り上げること。一、湯殿の奥への供番は交代すること。一、秀吉やおねねに口答えする者は一日一夜走りすること。以上。
「おきて」を「おもて」と書き間違えたり、下線部のように「可」(べし)を動詞の後に置く文法的な誤りが見られたり、「扶持扶持」のような繰り返しが見られ、よくいえば「かわいい」し、悪し様に言えば稚拙である。秀吉正室の高台院も、本文書では「おねゝ(踊り字)」と書かれている。
態度の大きいものや口答えする者は「軽め」(?)の処分を言い渡すということで、ずいぶんと細かいことを書面にしている。秀吉が自敬表現を使いはじめた年でもあるので、出自を意識し出したのかも知れない。
三条目は「口答えした者はグランド10周!」という1970年代のスポ根や青春ドラマそのままでなんとも微笑ましい。
一晩中縛られるので「軽い」処罰といえるかは微妙である。
「一夜はしり」でなく「一夜しはり」つまり「一夜縛り」の誤りでした。一晩中縛り付けておくの意味に訂正して、お詫び申し上げますm(__)m。