日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

元亀元年12月27日蜂須賀彦右衛門宛木下秀吉自筆書状

  返々すくなく□□候へ共、まつ/\わたし候へく候、りやう*1

  お*2出し候へ共、一き*3おこり候間、物なり候間、其御心へ候

  へく候、いそき候て、たんせん*4の事、さいそく*5かたくさせ候

  へく候、此ほか不申候、

こめ十ひやう、ひくち*6ニ其方よりのたんせんかたのこめお*7御わたし候へく候、すくなく候へ共、事ハり*8御申候て、御わたし候へく候、恐々謹言、又申候、長右*9ニ五貫文のはつ*10にわたし候へく候、

  十二月廿七日*11          秀吉(花押)

 

(異筆)

「しか*12の御ちん*13のとし((年:朝倉・浅井と織田・徳川の合戦の年))

 

(ウハ書)

「(墨引) はちひこゑ*14  藤吉郎

         まいる 御中*15    」

 

 

           「豊臣秀吉文書集 一」37号文書、13頁、「豊太閤真蹟集」

 

(書き下し文)

 

 米十俵、樋口にその方よりの段銭方の米を御渡し候べく候、少なくそうらえども、断り御申し候て、御渡し候へく候、恐々謹言、また申し候、長右に五貫文の筈に渡し候べく候、

   返すがえす少なく□□そうらえども、まずまず渡し候べく候、

  領中を出しそうらえども、一揆起こり候あいだ、物成候あいだ、

  その御心得候べく候、急ぎ候て、段銭のこと、催促堅くさせ候

  べく候、このほか申さず候、

 

(大意)

米十俵、樋口直房にそなたより段銭として徴収した米をお渡し下さい。本来の量より少なかったとしても、その旨樋口に伝えたうえで、米をお渡しになって下さい。また、長右に5貫文(手間賃か)渡して下さい。

追伸。くれぐれも徴収すべき量より少なかったとしても、とにかく先に渡して下さい。荘園外へ持ち出すことができても、一揆が起こり、騒然とした状況であるので、よく心得、残りの段銭徴収催促を急いで下さい。

 

*1:

*2:

*3:揆、伊勢長島の一向一揆

*4:段銭:文字通り、田一段あたりに賦課する臨時の公事だったが、恒常化するのは世の常

*5:催促

*6:樋口直房:信長家臣で秀吉の与力。人名については谷口克広「織田信長家臣人名辞典」によった。以下同じ

*7:

*8:断り

*9:未詳、在地の徴税請負人か

*10:

*11:元亀元年

*12:近江国滋賀

*13:

*14:蜂須賀正勝:信長家臣で秀吉の与力

*15:オンナカ、「おんちゅう」と読むようになったのは明治以降