返々すくなく□□候へ共、まつ/\わたし候へく候、りやう*1中
お*2出し候へ共、一き*3おこり候間、物なり候間、其御心へ候
へく候、いそき候て、たんせん*4の事、さいそく*5かたくさせ候
へく候、此ほか不申候、
こめ十ひやう、ひくち*6ニ其方よりのたんせんかたのこめお*7御わたし候へく候、すくなく候へ共、事ハり*8御申候て、御わたし候へく候、恐々謹言、又申候、長右*9ニ五貫文のはつ*10にわたし候へく候、
十二月廿七日*11 秀吉(花押)
(異筆)
「しか*12の御ちん*13のとし((年:朝倉・浅井と織田・徳川の合戦の年))」
(ウハ書)
「(墨引) はちひこゑ*14 藤吉郎
まいる 御中*15 」
「豊臣秀吉文書集 一」37号文書、13頁、「豊太閤真蹟集」
(書き下し文)
米十俵、樋口にその方よりの段銭方の米を御渡し候べく候、少なくそうらえども、断り御申し候て、御渡し候へく候、恐々謹言、また申し候、長右に五貫文の筈に渡し候べく候、
返すがえす少なく□□そうらえども、まずまず渡し候べく候、
領中を出しそうらえども、一揆起こり候あいだ、物成候あいだ、
その御心得候べく候、急ぎ候て、段銭のこと、催促堅くさせ候
べく候、このほか申さず候、
(大意)
米十俵、樋口直房にそなたより段銭として徴収した米をお渡し下さい。本来の量より少なかったとしても、その旨樋口に伝えたうえで、米をお渡しになって下さい。また、長右に5貫文(手間賃か)渡して下さい。
追伸。くれぐれも徴収すべき量より少なかったとしても、とにかく先に渡して下さい。荘園外へ持ち出すことができても、一揆が起こり、騒然とした状況であるので、よく心得、残りの段銭徴収催促を急いで下さい。