日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

天正6年3月25日播磨国戸田宛羽柴秀吉禁制

    禁制       戸田*1

一、軍勢甲乙人*2乱妨狼籍*3事、

一、伐採山林竹木事、付放火事、

一、田畠苅取事、

右条々堅令停止訖、若於令違背輩者速可処罪科者也、仍如件、

  天正六年三月廿五日      筑前守(花押)

 

(書き下し文)

     禁制      戸田

ひとつ、軍勢、甲乙人乱妨狼藉のこと、

ひとつ、山林竹木を伐り採ること、付けたり放火のこと、

ひとつ、田畠刈り取ること、

右条々堅く停止せしめおわんぬ、もし違背せしむるともがらにおいては速やかに罪科に処すべきものなり、よってくだんのごとし、

 

(大意)

     禁止事項    戸田郷の者どもへ

ひとつ、当軍勢の者が衆庶へ乱暴狼藉を働くこと。

ひとつ、当軍勢の者が山林の竹木を切り取り持ち去ること。付けたり、放火すること。

ひとつ、当軍勢の者が田畠を刈り取り、作物を奪うこと。

右の三条きびしく禁じたところである。もしこれに背く者どもがあらわれた場合は速やかに罪に問うものとする。以上。

                      「一、165号、55~56頁」

 Fig.1 播磨国加古郡

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                    『国史大辞典』「播磨国」より作成

Fig.2 播磨国加古郡刀田村周辺図

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                 『日本歴史地名大系』「兵庫県」より作成

「秀吉文書集 一」によれば天正6年3月播磨国へ本文書も含め4通、但馬へ1通禁制を発給している*4。いずれも三条からなるが、軍勢の甲乙人への乱妨狼藉以外は様々である。本文書では、二条目に「付けたり」として竹木の伐採禁止とは異なる放火の禁止を加えている。つまり内容の一貫性より様式を重視したものといえる。

 

*1:播磨国加古郡刀田、図参照

*2:名前でなく「甲」や「乙」のように呼ばれる人々

*3:ママ

*4:164~168号、55~56頁