日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

天正13年3月19日村上吉長宛佐々成政書状写を読む???

この記事で紹介された書状写を読んでみる。

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遠路御使礼書望至極候、如仰旧冬
其表罷通却種々御馳走、殊
山口迄御送外聞表(=憑)悦、此事
其以来以書状申入へキ、然者御身上
之儀最前以面如申候、家康江

具申入候、尚以不可存誠意候、河

中嶋表之儀大久保七郎右衛門方肝煎

儀候間、万端彼方与被仰渡候尤候、

従此方も御内証之を趣可申遣候、将又今度新保藤五郎ニ被仰聞候通、

不届候、尚重而可申入候条、不能殊候、
恐惶謹言
   三月十九日      成政(花押)
  村上左衛門尉殿  御報

 

(書き下し文)

 

遠路礼書をお使わし望み至極に候、仰せのごとく旧冬、その表まかり通り、かえって種々ご馳走、ことに山口(木曽郡カ)までお送り外聞憑悦、このことそれ以来書状をもって申し入るべき、しからばご身上の儀、最前面をもって申すごとく候、家康へつぶさに申し入れ候、なおもって誠意に存ずべからず候、河中嶋表の儀、大久保七郎右衛門方肝煎儀に候あいだ、ばんたん彼方と仰せ渡され候もっともに候、この方よりもご内証のおもむき、申し遣わすべく候、はたまた今度、新保藤五郎に仰せ聞けられ候とおり、
不届に候、なおかさねて申し入るべく候の条、殊にあたわず候、
恐惶謹言

 

(大意)

遠路はるばるご返事の使者をお遣わし下さり望外の幸せでございます。おっしゃるように昨年冬あなた様の領地を通らせていただいたさい、いろいろとお世話くださいました。とくに山口までお送り下さったことは名誉なことでございます。このお礼は本来ならば書面にてお礼を申し述べるべきところではございますが、まっさきに直接お目にかかって申し述べましたように、家康には事細かに話しました。なお重ねて申し上げますがこれで十分とは思いません。川中島の件は大久保忠世が世話を焼いて斡旋してくれましたので、すべて大久保が支配するのは当然のことでしょう。この点は内緒にしてくれと家康に伝えるのが当然でしょうが、また新しく大久保忠行に命じられたように家康との話はまだ行き届いておりません。もう一度家康へ申し入れるつもりです。とくに構えることでもありません。謹んで申し上げました。