茂久公有志士へ与ル書
方今世上一統動揺不容易時節ニ候万一事
変到来之節者(闕字)順聖院様御深志ヲ貫
キ以テ国家奉護天朝ニ可抽忠勤心得ニ候
各有志之面々深相心得国家之柱石ニ相立
我之不肖ヲ輔不汚国名誠忠ヲ尽呉候様偏
ニ頼存候仍而如件
安政六年己未十一月五日
源 茂久(花押)
誠忠士之面々江
(書き下し文)
茂久公こころざしある士へ与うる書
方今世上一統動揺容易ならざる時節に候、万一事変到来の節は順聖院様御深志を貫き、もって国家護りたてまつり天朝に忠勤をぬくべき心得えに候、おのおの有志の面々、深くあい心得え国家の柱石にあい立ち、われの不肖をたすけ国名をけがさず、誠忠を尽くしくれ候よう、ひとえに頼み存じ候、よってくだんのごとし、
*順聖院様:島津斉彬
*我之不肖:自分の未熟なところ
*国名:島津家の名誉
*源茂久:島津茂久(忠義)
(大意)
昨今世の中は動揺し容易ならざる時節です。万一事が起きたなら亡き斉彬様の深いお志を貫き、「国家」をお守りし、朝廷に忠節を尽くす所存です。それぞれ有志の者どもは、深くこのように心得え「国家」の基礎となるよう、自分の未熟なることを補佐し島津家の名誉をけがさず、忠義を尽くしてくれるよう、ただただ頼みます。以上。