日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

天正20年8月14日島津義久・細川藤孝宛豊臣秀吉朱印状を読む

      覚

一、島津義久并羽柴薩摩侍従*1蔵納*2分、近年沽却*3之田地

  田畠、悉勘落*4可仕候、則如元可為蔵入*5事、

一、寺社領*6之検地仕、当所務ゟ*7義久蔵入*8ニ可仕事、

一、島津家中諸代官*9算用之儀、可相改事、

右条々堅可申付候、若及異儀族有之者、可加成敗者也、

  天正廿年八月十四日(秀吉朱印)

           島津修理大夫入道とのへ*10

           長岡二位法印*11

                 『豊臣秀吉文書集 五』 4233号文書、243頁

 

(書き下し文)

     覚

一、島津義久ならびに羽柴薩摩侍従蔵納分、近年沽却の田地・田畠、ことごとく勘落つかまつるべく候、すなわちもとのごとく蔵入たるべきこと、

一、寺社領落の検地つかまつり、当所務より義久蔵入につかまつるべきこと、

一、島津家中・諸代官算用の儀、あいあらたむべきこと、

右の条々かたく申し付くべく候、もし異儀におよぶ族これあらば、成敗を加えるべきものなり、

 

(大意)

  覚

ひとつ、島津義久ならびに義弘の直轄地分、近年売却してしまった土地をすべて没収しなさい。そして元の通り直轄地としなさい。

ひとつ、寺社領の検地を行い、本年の年貢諸役の納入については義久の蔵にすべて納入しなさい。

ひとつ、島津家臣の知行地および代官の計算方法を改善しなさい。

右の条々きびしく命じます。もし反対する者がいたなら、成敗しなさい。

薩摩在国中の義久および秀吉の使者として派遣された細川幽斎に、売却などして島津家が失った土地を没収するよう命じたものである。また、島津家政への介入も行っている。

 

同日、秀吉は幽斎により詳細な朱印状を発している*12。その検討は後日行いたい。

 

*1:島津義弘、出陣中

*2:島津家の蔵入地、直轄地

*3:売却した

*4:土地を没収する

*5:「御」がついていないので島津家の蔵入地

*6:検地漏れした寺社領

*7:今年の所務沙汰から、今年の年貢納入から

*8:直轄

*9:「御」がついていれば秀吉の代官であるが、ないので島津家蔵入地を管理する代官

*10:島津義久

*11:細川藤孝

*12:同4234号文書