日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

2018年01月18日放送歴史秘話ヒストリア「百万石サバイバル! 加賀前田家・3人の英雄たち」で紹介された天正10年前田利家検地史料について

天正10年3月25日前田利家が検地を行った史料として以下の文書が紹介された。

 

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合四拾九町九段六十九歩  惣高

   此内

 四拾町三段百十八歩   田方分 上中下御定

 七町九反大九十九歩   畑方分 弐町六反九□

 壱段六十歩       屋敷分

 壱町四段大卅三歩    田畠荒分

但四拾三町半九歩  田畠屋敷  定高

  此俵千弐百九十壱俵壱斗七升弐合五勺

此外

  拾七町七段余     長不作有之

 天正拾年三月廿五日

        林久右衛門尉(花押)     

        神野孫右衛門尉(花押) 

 

「段」の単位に「大」「半」などの文字が見えるが、360歩=1段(反)なので、3分の2である240歩を「大」、2分の1である180歩を「半」、3分の1の120歩を「小」と呼ぶ、中世以来の単位を使用している。

 

村の合計高は49町9反69歩としているが、これは石高でなく面積である。もともと「高」は数量の総額を意味していたので「惣高」が石高とは限らない。ここでは村の総面積という意味になる。

 

(記載内容)

 

内訳は 田    40町3反118歩

    畑     7町9反339歩

    屋敷       1反60歩

    荒廃地   1町4反273歩

  年貢賦課高  43町189歩

  これを俵数に換算すると1291俵1斗7升2合5勺となる。

 このほかに、永年不作地として17町7段余ある。

 

年貢賦課高が43町あまりであるのに対して、荒廃地が1町4反、それとは別に「長不作地」つまり耕作放棄地が17町あまりというのは、かなり疲弊した村であると思う。

 

1升は1.8リットルなので1勺は18ccとなる。番組では前田利家の計算の細かさを好意的に解説していたが、取られる百姓側からはたまったものではない。ちなみに「勺」の下には「才」という単位もあり、実際年貢量が才単位で書かれている文書もある。1.8cc単位のレベルになる。

 

石高で村高を表す方法はまだ登場せず、また面積の単位も360歩=1反でありかつ「大半小」という中世の方法を踏襲している点は注意したい。