日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

西本願寺幕末新史料の発見 その1

インターネットのおかげで新史料発見のニュースが迅速にかつ詳しく入手できるようになった。とくに地方紙や地方版は大きく写真入りで取り上げてくれるので部分だけだが、どのようなことが書かれているのか、字体に少々違和感はないかなどの貴重な情報が満載である。

 

しかし、当然メディアによって切り口は異なってくる。今回のように史料「群」として発見された場合はなおさらそうならざるを得ない。

 

西本願寺築地本願寺とのやりとりに関する文書群が見つかったというニュースをそれぞれのメディアから覗いてみる。

 

今回はMBS放送の動画から家茂の容体に関する記述を見てみよう。

 http://www.mbs.jp/news/kansai/20171125/00000016.shtml

 

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(前略)

御容軆奉診候処、元来御壮實御血質御渋滞御瘡氣御鬱伏之御平軆、殊ニ昨年来風土茂被為替、度々瀉邪御含被為遊、四月下旬以来諸症御差引被為在候上、六月下旬更ニ瀉邪ニ被為遊候歟、御水気被為發御發勢御脈緊数御嘔吐悪心不食御小水御不利等之御症状被為加候御儀与奉診(後略)

 

(書き下し文)

御容軆みたてまつり候ところ、元来御壮實、御血質御渋滞、御瘡氣御うつ伏せの御平軆、ことに昨年来風土も替わせられ、度々瀉邪御含み遊ばされ、四月下旬以来諸症御差し引きあらせられ候うえ、六月下旬さらに瀉邪に遊ばされ候か、御水気発せられ、勢いをお発し、御脈数すみやかに御嘔吐、悪心、不食、御小水御不利等の御症状加えさせられ候御儀とみたてまつり(後略)

 

*壮實:元気で健康なさま。ここでは体質か。

*昨年来風土も替わせられ:長州戦争時たびたび上洛したこと。

*水気:「すいけ」、水腫のこと。

*不利:状況などがよくないこと。また、そのさま

 

 

 

 

家茂に、つぎつぎと症状があらわれ容体が相当悪化していると想像できる。将軍の健康状態はトップシークレットであるが、これだけ具体的な情報のやりとりなら、それこそ密書扱いせねばなるまい。動画は本文のみで包紙などについては触れていない。どのように残され、そしていかなる状況で発見されたのかも文書そのものと同様に重要な情報である。