1980年代、村落史研究で著名な中村吉治氏のインタビューがある雑誌に掲載された。そこで自身が卒論のテーマについて相談した時の話が披露された。
彼はのちに土一揆や農政関係の著書を刊行することになるのだが、そのテーマとして農民について書きたいと指導教官に相談した際「百姓に歴史がありますか」とだけ言われたという。意味が理解できなかった中村は今一度聞き直すと「豚に歴史がありますか」ということだったという。
この記事が掲載されると、日本史を学ぶ者ばかりか東洋史や西洋史を専攻とする者にも衝撃を与え、数ヶ月後この逸話が現代史家による史学史の著書で紹介されると歴史学を学ぶ者で知らぬ者はいなくなったくらい膾炙した話であり、Wikipediaの中村吉治の項でも取り上げられているほどである。
後年、人間と動物の関係にも時代性が表れるとする近世史学者によって「ブタにも歴史はあります」という論文が著されたくらいの衝撃的な逸話だった。
実際戦国期の南蛮図屏風を見ると、ネコにリードをつなげて歩く人の姿が描かれている。現代ではイヌがその代表であるが、当時のポルトガル人はネコをそのように飼い慣らしていたのかも知れない。
追記:当時友人をつかまえてきては卒論のテーマを尋ね、「ふ~ん。それで○○に歴史がありますか?」という真似をしたこともある。