日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

「人国記」より「石見国国民性」を読む

   石見国

 石見の国の風俗は、丹後の国に異ならずして、偽りばかりにて実ある人稀なりと知るべし。これも隼・鷹は吉(よ)し*1人の風俗、曾(かつ)て*2好むべからざるなり実ある人は千人に一人も稀なり。智ある人は日々夜々に悪心を挟(さしはさ)み、言語道断と知るべし。

           浅野建二校注『人国記・新人国記』岩波文庫、69頁

 

石見国の人は、丹後と同様に中身のない人間ばかりだと思え、といい、その風俗はまったく望ましいものでないという。中身のある人間は1000人に1人もいないとする*3

 

「人国記」とは畢竟、偏見に満ちた毀誉褒貶の書で日本地誌の書とは言いがたい。

 

 

*1:鷹狩りに使われる隼・鷹が多く棲息するが、人は駄目でも、隼・鷹はすぐれているの意

*2:「まったく~ない」の意

*3:丹後では「丹後の国の風俗、上下・男女ともに千人・万人の内に過ぎて一人も好き人稀なり」(64頁)とさらにその確率は十分の一下がる