石見の国の風俗は、丹後の国に異ならずして、偽りばかりにて実ある人稀なりと知るべし。これも隼・鷹は吉(よ)し*1。人の風俗、曾(かつ)て*2好むべからざるなり。実ある人は千人に一人も稀なり。智ある人は日々夜々に悪心を挟(さしはさ)み、言語道断と知るべし。
浅野建二校注『人国記・新人国記』岩波文庫、69頁
石見国の人は、丹後と同様に中身のない人間ばかりだと思え、といい、その風俗はまったく望ましいものでないという。中身のある人間は1000人に1人もいないとする*3。
「人国記」とは畢竟、偏見に満ちた毀誉褒貶の書で日本地誌の書とは言いがたい。