一、 治部少輔*1上洛次第、義久*2御隠居之儀、可言上申候、然時ハ、当所務*3已前ニ義久御隠居可有之候、然上ハ、薩隅諸県当所務弃破勘落之分、不残可被召上御分別*4、此一儀*5ニ相究候、縦先度治部少輔御直談之刻、此通於被仰究ハ、此状参著已後成共、急速ニ治部少輔ニ、右之一儀可有御熟談事、肝要ま*6て候、
(書き下し文)
一、治部少輔上洛次第、義久御隠居の儀、言上申すべく候、しかるときは、当所務已前に義久御隠居これあるべく候、しかるうえは、薩隅諸県当所務弃破勘落の分、のこらず召し上げらるべき御分別、この一儀にあい究め候、たとい先度治部少輔御直談のきざみ、このとおり仰せ究めらるにおいては、この状参着已後なるとも、急速に治部少輔に、右の一儀御熟談あるべきこと、肝要にて候、
(大意)
一、 三成が上洛次第、義久隠居の件、上申するようにしてください。そのさい、今年の年貢納入以前に義久が隠居するように、さらに薩摩・大隅・日向諸県郡の土地を残らず没収すべきとのご理解に決まりました。以前三成との直談の節、このようにお決めになったのなら、たとえこの書状がそちらに届いたのちでも、この件、急ぎ三成にご相談すべきことが大切です。
Fig. 「肝要まて候」について 変体仮名「に」
三成家臣の安宅秀安が、今年の年貢納入までに島津義久を隠居させるよう、義弘・久保父子に迫っていることがわかる。またその際同時に家臣の知行地や寺社領の没収を行うよう要求している。