前々回、前回に続き藤堂高虎の発した家中条目を読む。
japanesehistorybasedonarchives.hatenablog.com
一、知行に応し馬武具可相嗜*1事、
(書き下し文)
ひとつ、知行に応じ、馬・武具あい嗜むべきこと、
(大意)
ひとつ、知行高に応じて、馬具や武具を準備しなさい。
『大日本史料』12編、25巻、508頁
「嗜」には用意のほかに「節制、慎み」の意がある。そう考えると「知行に応し」の部分が一層いきてくる。武家の被官は主人に対して、知行高の多寡に応じて「奉公」するわけで、それが軍役である。むろん戦時は出兵するが、通常は主人・主君のもとへ参上することで、もっとも知られているものとしては大名の「在江戸交替」=参勤交代がある*2。
ここでは単に「馬術や武芸を磨け」ということではなく、「知行高に対して過不足なく用意せよ」とする点が重要である。これは負担が青天井に増えることを防ぐことも意味するだろう。