日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

朝ドラ「ごちそうさん」の登場人物命名についての違和感 再論

 

以前こういう記事を書いた。

japanesehistorybasedonarchives.hatenablog.com

 

以前の記事の具体例を偶然見つけたので、ふたたび論じることにする。

mainichi.jp

 

      

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何の御役にも立つませず世を去りました

御主人様の御情けで私共親子三人何(ど)うに

*1/\(あつくあつく)御礼申上げます皆様にも

 

 

この書翰は昭和8年(1933)に書かれたもので「ごちそうさん」の時代と同じである。

 

ヒロインの娘を「ふ久」と名付けたことに、以前違和感を覚えたことを記したが、その根拠のひとつにこの書翰を加えたい。

 

ひらがな「く」は以下の通り、さまざまなバリエーションがある。

 

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           変体仮名を調べる 変体仮名 五十音順一覧1

 

 

ひらがなの「く」は「久」の草書であり、宛字などではない。奇をてらわず「ふく」とした方が日本語的には正確だった。ヒロインの名前「め以子」もまた同様である。

 

 

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           変体仮名を調べる 変体仮名 五十音順一覧1

 

しかし、ドラマとしての成功度への貢献は大いにあったのかも知れない。

 

ところで、最近そば屋の暖簾から変体仮名が急速に消えつつあるように感じる。老舗と称するそば屋ですらそうである。旧東海道の宿場町など歴史的由緒を売りにするところでは、その傾向は顕著である。これはいったいどうしたことだろうか。

 

「外国人観光客から質問されたさいに答えられないから」、というのが当ブログの邪推するところだが、事情をご存じの方は是非ご教示いただきたい。

 

最近、豪華な装飾を施した箸袋に楷書で「おてもと」と書かれたものを見た。 装飾と文字のアンバランスさ、センスの欠如にめまいを覚えたものだ。 箸袋からすら変体仮名を「追放」しようというのだろうか。 なんだかどこを切っても金太郎のような画一的なものでないといけないのだろうかと感じる。草書や変体仮名は多様で、 楷書や活字とは趣を異にする。もう無用の長物にすぎないのだろうか。

*1:「久」ではない