前回の記事で読んだ裁許状中に見える天正元年の連署起請文を読んでみたい。『三重県史資料編近世1』120頁
慶長11年9月23日甲賀郡和田村・五反田村惣百姓中宛米津正勝・板倉勝重・大久保長安連署山論裁許状を読む - 日本史史料を読むブログ
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今度上柘植与被御仰構儀ニ付而
双方御一書具致披見異見具申条々
□(一、)北面者そろ/\たうけから川を限、東南者今度和田五段田ゟたて被申傍爾を限、其内ノ山之儀ハ、草柴上柘植与其方立合ニからるへく候、然者所之山ノ内へわた・五段田ゟハよき同きかま被入間敷候、此旨彼方江も異見申候事、
* 構:「かまい」差し支え、トラブル。
*傍爾:榜示「ぼうじ」立て札
*よき:斧のこと。「よきこときく」でおなじみ。
*きかま:「木鎌」
(書き下し文)
今度上柘植とかまえ御仰せらる儀
について双方ご一書つぶさに披見
いたし異見つぶさに申す条々
(ひとつ、)北面はそろぞろ峠から川を限り、東南は今度和田・五段田より建て申され榜示を限り、その内ノ山の儀は、草柴上柘植とその方立ち合いに苅らるべく候、しからばところの山ノ内へ和田・五段田よりはよき同じくきかま入れらるまじく候、この旨彼方へも異見申し候こと、
(大意)
このたび上柘植とトラブルが生じたことについて、双方の主張をよく吟味し詳しく取り決め、百姓どもに言い含めるべきことについての事書き。
ひとつ、北側はそろぞろ峠から川を境界線とし、東南は今回、和田村・五段田村側から建てられた立て札を境界とし、その内側の山に生えている草柴は、上柘植と和田・五段田の入会として苅りとることとする。今回問題になった山の中へ和田村と五段田村側からは斧や鎌を持って入山することはならない。この決定について、伊賀、甲賀双方の百姓どもまで言い含めることとする。
写真はこの文書の中央部分のみで、ここに書き出した部分は載っていない。
「犬神家の一族」以外で、「よき」が斧の意味で使われる事例をはじめて見た。