日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

歴史番組の恐ろしい史料解釈

あるテレビ番組を見ていたところ、信じられない解釈が披露された。

曰わく

 

 

当時、人の名前を書くのを憚って伏せ字にする習慣があった

 

 

 

伏せ字にする習慣などない。名前ではなく、官途名、受領名、屋敷の所在地、単に「御屋形様/御館様」などと書いていたことは確かである。

 

また宛所以外でも御成敗式目「右大将家の御時定め置かるゝ所は」のような事例はいくらでもある。

 

伏せ字はかなり例外的な書き方で、とても習慣とは呼べない。少なくともポピュラーな表現法でないとは言える。

 

また文書の様式でも発給者と受給者のあいだに奉者など入れることで、権威づけした「奉書」(書き止め文言が「仍執達如件」など)などのような様式も発達した。