日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

「西郷どん(2)立派なお侍」検見取・坪刈・礼銭

徳川幕府のもと代官・郡代として勤めた安藤博が、大正年間に自身の記憶と手許の文書類から旧幕時代の地方(じかた、これに対して都市部を「町方」と呼ぶ)支配の実務についてまとめたものを『徳川幕府県治要略』として刊行した。図解入りで検地(でこぼこした田畑を長方形として計算する方法など)や坪刈の様子が描かれている。

 

「検見坪刈之図」

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国立国会図書館のデジタルコレクションからダウンロードできるのでこちらからどうぞ。

国立国会図書館デジタルコレクション - 徳川幕府県治要略

「検見坪刈之図」は125コマ目にある。ほかにも書類の書き方なども書かれており、全文ダウンロードして眺めると、吉之助のような郡方役人の実務が理解しやすい。

 

地方(じかた)のことを「郡方」(こおりかた)とも呼ぶので、西郷吉之助の役目は幕府直轄領でいえば代官や郡代の手代などにあたる。

 

検見取りのときに「礼銭」を渡すシーンがあったが、検地など現地に役人がおもむくさいはよく見られたらしい。これも長い歴史がある。戦国大名六角氏の場合は以下の記事を参照されたい。

 

japanesehistorybasedonarchives.hatenablog.com

 

ちなみに、銭が縄で束ねられていたが、銭緡(ぜにさし)と呼ばれ1文銭96枚で100文とする計算法だった。これが厄介で経営史の方々が大福帳や金銀出入帳などを分析する際、どう扱ったのかお教えを請いたいといつも思う。

 

 

 

こういった論文もあるので参考までに。

ci.nii.ac.jp