先日小島道裕氏の『読めなくても大丈夫!中世の古文書入門』(2016年、河出書房新社)を拝読した。
「読めなくても大丈夫!」の謳い文句に嘘はなかった。カラー版で、文書を部分に分け、丁寧な説明がなされていて、文書(もんじょ)が(1)本文(2)日付(3)差出人(4)請取人の4つで構成されていることがよくわかる。
「です、ます」調で書かれており、ルビもふんだんで、古文書学の専門用語もかみ砕いて解説されているので、数時間で全127頁を読破できそうである。
文書の原点である律令で定められた様式から、時代を経るに従い様々な形式の文書が生まれてくる事情もわかりやすい。
なぜ書き止め文言が重要なのか、なぜ学者により呼び名が異なるのかなど硬軟織り交ぜた内容は初学者のみならず、歴史学徒にも古文書学入門となる好著である。
有名人(頼朝や信長、秀吉など)の花押の書き順も1頁全面に解説されているので、参考になる。
最近新史料発見のニュースが相次いでいるが、どうもメディアは歴史学を苦手としているらしく、正確に理解しているとはとても思えない。また博物館などで文書の展示がされることも多いので、本書を手許に備えておくとより正確な知識を得られると思う。