日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

アシガール第9話に登場する古文書の話 その2

前回に続き、アシガール第9話の話をしてみたい。

 

ところで正名僕蔵演じる高校教員が、遺構から発掘された唯の写真を持ち歩いていたが、これは完全に窃盗である。名探偵ポアロも時々発掘現場におもむいては出土品をポケットにこっそり忍ばせることがあるが、これも窃盗であり、手癖が悪い名探偵というのは「灰色の脳細胞」の持ち主と言わしめた天才も所詮は人の子という含意があるのだろうか(ドラマに限る)。

 

発掘は宝探しとはまったく異なる。発掘も遺構を破壊する行為である点は共通するが、目的はまったく異なる。

 

シュリーマンの発掘方法を真似しようものなら、現在では完全に文化財破壊行為とされるだろう。

 

 

さて第9話に登場した文書の見える範囲を引用しよう。

 

           松丸治部少・・・

 永禄三年三月十九日

  御屋形様

    人々御中 

 

 

松丸治部少輔発給の文書であるが「人々御中」という脇付に職人芸を感じた。これは「ひとびとおんなか」と読み、明治期以降「人々」がとれしかも音読の「おんちゅう」として使われるようになり、現在にいたっている。

 

 

ちなみに、敏いとうとハッピー&ブルーの歌う「星降る街角」や南佳孝の「スローなブギにしてくれ」の歌い出しを「おんちゅう」と聞き間違える方がいるらしいので、ご注意を。