「おんな城主直虎」に出てきた武田勝頼から築山殿に宛てた文書を読んでみよう。
(包紙ウハ書)
「築やま 殿 かつ頼
まゐる 」
(中略)
いたすへく候、宜しくなか・・・
されへく候、かへす(くの字点)御物入・・・
候あひた、御ひ見のうへ干火中・・・
入れへく候、穴賢(くの字点)
四月十九日 かつ頼(花押)
築やま殿
まゐる
(書き下し文)
いたすべく候、よろしくなか・・・
されべく候、かえすがえす御物入り・・・
候あいだ、御披見の上火中に・・・
入れべく候、あなかしこ、あなかしこ
*まゐる:相手への敬意を表す脇付で決まり文句。
*穴賢:男性が使う「恐惶謹言」、「恐々謹言」に対して、多くは女性が使う書き止め文言。現代でも女性のみが使用する「かしこ」として伝わっている。
*(花押):花押は書き判とも呼ばれるように自署が原則であるが、近世に入ると擦ったものを据えるようになる。画面からはどうも後者のように見えてしょうがない。
「御ひ見のうへ干火中」の部分はジェームスボンドのテープを思い出してしまう。ところで「四月」というのは少々意外だった。個人の経験則では4月は「卯月」とするものが多いからだ。あとずっと割合が下がって11月の「霜月」、12月の「極月」はたまに見るくらいだが卯月は多いと思う。