日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

天正15年10月14日島津義久宛豊臣秀吉知行充行状

為在京之堪忍*1分*2、於上方壱万石宛行訖、所付*3儀者来春可被仰付候*4、当年者以物成*5半納分*6、八木*7五千石被下候条、各支配在之、堪忍方相続*8候様可然候也、 天正十五 十月十四日(花押) 島津修理大夫*9 とのへ (三、2354号) (書き下し文) 在京の…

天正15年10月13日加藤清正宛/増田長盛宛豊臣秀吉米切手写

八木*1弐千石、島津修理太夫*2ニくたされ候間、慥ニはかりわたすへきものなり、 天正十五 十月十三日 御朱印 かとうかすへ*3 八木千石 そうふへきうない*4 八木千石 こいてはりまのかミ*5 はちすかあわの守*6借用*7之米千石、島津修理太夫ニくたされ候、たし…

明暦3年4月29日「免盛」定めにつき

これはある藩が「免盛」を定めるときの心構えを定めたものである。「盛る」とは「目盛」のようにあるものを測るときの基準のことで、「免」は年貢を意味する。つまり年貢率を定める手順(プロシージャー)を示した文書である。 (書き下し文) 一、①免盛の時…

慶長3年1月10日上杉景勝宛豊臣秀吉朱印状 奉公人・侍・百姓

武家、奉公人と百姓の関係を端的に物語る史料がある。越後から米沢へ転封された上杉景勝宛の、米沢に連れて行くべき者と連れて行ってはならない者を秀吉が景勝に明示した朱印状である。 今度会津江国替ニ付而、①其方家中侍之事者不及申、中間・小者ニ至る迄…

NHK時代劇「大江戸を斬る」 最終回

1. 細川家文書に見る「日雇」 まずこの画面を見ておきたい。 傍線部の1行前から 拾四匁壱分*1弐厘八毛… 会所惣国日雇請人… 其外諸入目*2并… とある。どうも日雇い労働者やその身元保証人である「請人」に関する「諸入目」=諸経費の概算が記されているらしい…

NHKスペシャル 「大江戸」 第1回の問題点 4 公儀普請への人足徴発(加賀前田家)

「暖簾に腕押し」「糠に釘」状態なので今回でこの話題は終えることとする。大学のレポートとして及第点はもらえないがテレビ番組としては成立する現状は憂うべきと思う一方、所詮エンターテインメントに過ぎないといってしまえばそれまでである。 この番組は…

NHKスペシャル 「大江戸」 第1回の問題点 3 奉公人の存在

今回は「奉公人」について述べる。 まずは数年前メディアで話題となった新発見の藤堂高虎宛小堀遠州書状を見てみよう。 史料 寛永3年12月17日藤堂高虎宛小堀正一書状 (翻刻文) 一、上方相替事無御座候、京 いなかともニ民百性・町人 奉公人まても米無之、…

NHKスペシャル 「大江戸」 第1回の問題点 2

さてまず①の「 サムライが築いた」の意味するところを考えてみたい。 言い換えると中近世移行期における「侍」とは何かという問題である。様々な意味で使われるため一言で説明することは困難であるし無意味でもあり、結局史料の文脈ごとに個別に判断せざるを…

NHKスペシャル 「大江戸」 第1回の問題点 1

NHKスペシャル「大江戸」は時代劇としては面白いが、史実=再現ドラマかと問われると首を横に振らざるを得ない。好評だそうだがあくまでもフィクションとして楽しみたい。以前にも疑義をはさんだことがあるが、最大の問題はどこまでが史実の復元でどこからが…