日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

天正20年1月吉川広家宛豊臣秀次朱印状を読む その2

一、人足*1飯米事、惣別*2雖為御掟*3、尚以給人*4其念を入可下行*5事、
一、遠国より御供仕輩*6ハ、軍役それ/\に御ゆるしなされ候間、来十月にハかはり*7の儀、可被仰付候間、上下共ニ可成其意事、

 

(書き下し文)

ひとつ、人足飯米のこと、惣別御掟たるといえども、なおもって給人その念を入れ下行すべきこと、
ひとつ、遠国より御供仕る輩は、軍役それぞれに御ゆるしなされ候あいだ、来たる十月には替わりの儀、仰せ付けらるべく候あいだ、上下ともに其意をなすべきこと、

 

(大意)

ひとつ、人足役をつとめる者たちに与える飯米について、総じて秀吉さまの命があるからと油断することなく、家臣たちに念を入れさせ、滞りなく与えなさい。

ひとつ、遠国より供の者を連れてきた者の軍役は免除するので、来月十月出替わりを命じられるはずなので、上下の者とも承知しておきなさい。

 

下線部の「遠国」が指す具体的な地域はわからない。ただ「御供」を連れてくれば軍役を免除する、ということは身代わりを差し出せば逃れられるということではないだろうか。「人掃」も不完全で、IDなどという概念もない。つまり、頭数をそろえればよい、と解釈することもできる。

 

もっと踏み込めば「どこかからか供を連れてくれば免除する」という意味かもしれない。

*1:貨物の運搬や普請をする者、非戦闘員

*2:総じて、万事

*3:命令、「御」があるので秀吉の命、具体的には1月5日付豊臣秀吉朱印状。軍勢陣取り先の在々百姓逃散の防止、宿町の商売の妨げの禁止、押買いは一銭切りとある。なおこれに背かない旨の起請文案もある、吉川家文書742号

*4:充所である大名の家臣

*5:ゲギョウ、上位の者が下位の者に米や銭を与えること

*6:従者を従えてきた者

*7:替、奉公人が契約期間を終えて交替すること=出替わりの意