日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

昭和17年7月5日徳富蘇峰宛金栗四三書翰をちょっと読む

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(封筒オモテ)

大森区山王一ノ二,八三九 

  徳富猪一郎*1様  」

(封筒ウラ)

「豊島区高田本町

  ?ノ一,五二〇 

       金栗四三

(前半部分見えず)

誠に御無理なる御願ひには
候へ共五月三十一日三等堂*2*3に於て
先生*4の御講話要旨簡単
御記しの上御送附賜り候はゞ
幸甚此上無之右実然*5にて恐縮
ながら何分宜敷御配慮賜り
此段御願申上候 敬具
 昭和十七年七月五日
         金栗 四三

(書き下し文)

まことにご無理なるお願いには候えども、五月三十一日三等堂において先生のご講話要旨、簡単お記しのうえ、ご送附たまわりそうらわば、幸甚この上これなく、みぎ実然にて、恐縮ながら何分よろしくご配慮たまわり、この段お願い申し上げ候、敬具、

(大意)

まことにご無理なお願いではございますが、5月31日三等堂での先生の講話の要旨を簡単におまとめの上、お送り下されば、このうえなくさいわいです。以上いつわりのないことで、恐縮ですが何分よろしく御配慮下さいますよう、この段お願い申し上げます。敬具。

 

手紙の書き方として「敬具」なら「時節柄・・・」のような文言を要するが、慌てていたのだろうか。きれいな文字に比して失礼な文面の対照がとても印象的である。

*1:徳富蘇峰の本名

*2:「堂」はうかんむりの左下に「口」右下に「土」の異体字を使用している

*3:未詳

*4:徳富蘇峰

*5:まことなるさま、いつわりのないさま