日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

明治元年9月8日太政官布告第726号(改元詔書)を読む

明治元年9月8日「改元詔書」と呼ばれる太政官布告が出された。興味深いのは、慶応4年の元日に遡って明治元年とする点である。これは明治に限って行われ、大正、昭和、平成では行われなかった。

 

Fig.1

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法令全書. 慶応3年 - 国立国会図書館デジタルコレクション

更に一新*1ともに始め、慶応四年を改め明治元年となす、自今以後旧制を革易*2し、もって一世一元を永式*3となす、

これにより「明治元年1月1日生まれ」という扱いもされた。

https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/1790495/shichinohe_1790495.pdf

ただし、前述したように大正、昭和への改元の際、この原則は適用されていない。平成もそうなのだが、実際には昭和64年が存在しなかったかのごとく「平成元年=1989年」とする事例はしばしば見られる*4。つまり事実上昭和64年は記憶から、あるいは記録から消えつつある。2019年度を「平成31年度」として始めた当初は問題ないだろうが、改元された5月以降、新元号と平成、西暦の3つを使いこなす必要がある。旧元号を使うことに違和感を覚える向きもあるだろう。

 

10年後、20年後、50年後、100年後・・・に2019年度を思うとき、まして入学、入社時は「平成31年度入学(入社)」とされても、1月後には過去のものとなる。すでに「慶応」という年号は一般に忘れられかけている。

 

そうすると、この太政官布告のように遡及する記憶法があらわれるかもしれない。つまり「2019年=新元号元年」とするように、である。実際住民課などに備えられている年齢早見表は、この方式がとられている。

 

改元に際して、この太政官布告を念頭に置くことも無駄ではなかろう。

 

 

*1:明治維新

*2:変える

*3:永久に守らなければならないきまり

*4:時系列のグラフを和暦で表す場合に昭和64年を平成元年に含めてしまうなど