日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

ファイリングされた文書「綴」 「戦死屍仕末金諸入用帳」について

古文書は形態により、折紙、竪紙、続紙などの一紙もの(「状」と呼ぶ)と竪冊(竪帳とも)、横冊(横帳とも)、横半帳などの冊子体(「冊」、「帳」などと呼ぶ)に大きく分けられる。後者の冊子体はあらかじめ冊子にしたあとで書き込むもので、当然記載に過不足が生じる。検地帳などは「丁」と「丁」のあいだに割印し、改竄を防ぐ工夫も見られる。

 

割印の例

ãæ¤å°å¸³ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

文禄3年「椎堂村検地帳」

 

参照ブログ 古文書の用紙

 

また、目録作成時、以下のような項目を記入する。「形態」に注目されたい。

f:id:x4090x:20181120104503p:plain

https://www.google.co.jp/url?sa=i&source=imgres&cd=&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwjV96mm7OHeAhVEwLwKHQoRB2MQjRx6BAgBEAU&url=http%3A%2F%2Fwww.pref.kanagawa.jp%2Fdocs%2Fkt7%2Fcnt%2Ff100108%2Fp10528.html&psig=AOvVaw0TyGPSWi1woFwzSzthpN_Q&ust=1542764464031587

 

一方、もともと別々に作成された一紙ものや冊子体を、あとでなんらかの目的のために一つの紐で綴じた文書もある。その場合あとから表題をつける場合もある。これを「綴」と呼ぶ。

 

今日、われわれが取捨選択してファイリングする作業と同じである。したがって、それぞれ別々の目的で作成された文書を、さらにのちの都合、目的によって取捨選択した上で二次的に作成された文書である。

 

この文書もその「綴」にあたる。

www.kahoku.co.jp

 

f:id:x4090x:20181119183237j:plain

https://photo.kahoku.co.jp/graph/2018/11/18/01_20181118_63035/003.html

 

1枚目を見ると②にあるように「覚」という表題がつけられており「一つ書き」には金額、支出先と費目が書かれているのに対して、2枚目には人数が書かれており、文書の性格が異なることがわかる。この「覚」という表題は汎用性が高いため多用されるが、そのためかえって表題だけでは内容はうかがえない。

 

この「覚」などを綴じたあとで①「戦死屍仕末金諸入用帳」としたようで、「諸入用帳」の「諸」の文字が「覚」の上に書かれているように見える*1

 

こうした「綴」はまず「一点」と数えるべきか、という問題をはらむ。同時に作成年代も「一点」なら特定年月日、もしくは「何年何月何日より何年何月何日まで」とすることも可能だが、後者の場合は連続性が前提になっており、まったく別々に作成されたものの上限と下限をそのまま「何年何月何日より何年何月何日まで」とするわけにはいかない。

 

 

*1:解像度が低いため断定できないが