日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

新発見の柴田勝家書状の注目すべき保存状態

また文書の新発見があった。

www3.nhk.or.jp

 

今回は文書の伝来と形態について述べてみたい。

 

古代・中世の文書は掛け軸などに表装されていることが多く、必ずしも原形を現在に伝えているとはいえない。骨董市場に出回る物も多くが表装されており、なかには天地をそろえるために、折紙を折り目に沿って一度裁断した上で折紙風に表装しているケースもある。

 

その場合、当然包紙などは行方がわからなくなる。しかし今回の発見は原形を留めている点でも貴重である。

 Fig.1

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右上に包紙が見える。また、勝家の書状が切封だったことも伝えている。

Fig.2

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Fig.3

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 Fig.2、3の右端に見える紐は、下から切り裂いてつくっている。

 

 

追記

この紐に墨が見えるのは、封をしたあとに宛先を書くためである。と言葉で説明してもわからないので、実際に作成された方のブログを紹介する。実にわかりやすく説明されている。

 

昔の手紙の封のしかた:きりふうすみびき。 – balicpapan

 

blogs.yahoo.co.jp

 

 

 

切封は次のように作成する。

 Fig.4

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                               「国史大辞典」

 

ちなみに冒頭にはこうある。

天下様子無是非次第
絶言語計候

 

(書き下し文)

天下の様子、是非なき次第、言語に絶するばかりに候、

 

(大意)

天下の状況はどうしようもなく、筆舌に尽くしがたいほどです。