国立歴史民俗博物館図録『日本の中世文書』6-16号文書、176頁
(竪紙)
令渡海万端可然之様御調達憑入*5候国
儀式為使節差上建善大喜和尚茂留
味里大屋子*9委曲付于彼舌頭者也雖軽
不宣*12
萬暦十九年*13
仲穐*14廿有一日
(書き下し文)
今春直林寺使節として下向しつつがなく上着候や、しからば関八州追伐の祝儀として、今度紋船渡海せしめ、万端しかるべきのさま御調達憑み入り候、国家衰微のあいだ、方物献ぜざるといえども、表の楽人等の儀式使節として差し上げ、建善大喜和尚・茂留・味里大屋子委曲について彼の舌頭するものなり、軽薄の土産といえども録別に副え、いささか礼儀を表すのみ、恐惶不宣、
(大意)
この春、使節として派遣した者たちは無事に到着しましたでしょうか。このたびは秀吉様の天下統一のお祝いのため紋船を派遣しましたので、種々よろしくお願い申し上げます。我が琉球王国は困難に直面しておりますので、貢物は献上しませんが、奏者を儀式の使節として派遣し、建善大喜和尚らが詳しく申し上げます。誠意のない献上品ではありますが目録をこの文書に副え、わずかばかりの敬意のみをあらわします。謹んで申し上げました。
充所に「謹上」と書き、差出人とくらべて高い位置に置かれている一方、差出人の文字はやや大書されている。ここに外交上の微妙な関係が反映されている。