日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

慶長6年4月17日松井康之宛片桐且元ほか3名連署奉書を読む

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八代市立博物館蔵 http://www.city.yatsushiro.kumamoto.jp/museum/event/2009/matsuimonjo/17.jpg

 

(折紙)

一書申入候仍豊後

国之内速水郡*1

之残壱万七千百

六拾石余之分

御代官*2御給人*3

被為付候内其方へ

当座預ケ置申候

条仕置等可

被申付候重而*4

御用次第ニ切手

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可差遣候恐々

謹言

    加藤喜左衛門

 四月十七日   正次(花押)

    大久保十兵衛

         長安(花押)

    彦坂小刑部

         元正(花押)

    片桐市正*5

         且元(花押)

 

(貼紙・朱筆)

「弐冊目

  七十二番」

 松井佐渡*6殿

      御宿所

 

(書き下し文)

 

一書申し入れ候、よって豊後国のうち速水郡ののこり壱万七千百六拾石余の分、御代官・御給人付けさせられ候うち、その方へ当座預け置き申し候条、仕置など申し付けらるべく候、かさねて御用次第に切手差し遣わすべく候、恐々謹言、

 

(大意)

 手紙をもって申し入れます。豊後国速水郡のうち幕領・大名領以外の残り1万7160石あまりを、その方へ当分の間預け置きますので、統治をお任せします。今後必要とあらば文書を発給します。謹んで申し上げました。

 

 

豊後国速水(速見)郡周辺図

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ここで連署しているのは片桐且元以外、家康の直臣で「地方巧者」と呼ばれた者である。とすれば、片桐はその筆頭という位置づけになろうか。

 

なお、「貼紙・朱筆」は後世行われた文書整理によってつけられた番号である。

 

*1:速見郡

*2:徳川家康の代官

*3:家康の直臣

*4:今後、そのうちに

*5:いちのかみ、市司の長官

*6:松井康之