日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

天正18年7月25日佐竹義久宛嶋清興書状を読む????  その1

 前回に続いて嶋清興書状を読んでみる。

 

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 (折封ウハ書)

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(折紙)

 

(折封ウハ書)

「東中*1様 御陣所   嶋左

             清興」

 

  尚々不及申候へ共
  いつれのことも無御
  失念様専一候以上

□(一カ)今日者不申承候仍
上様*2明日御成と申候
但気合*3外悪候間
今日迄不罷出候条慥
之儀ハ不存候
一、指出*4悉出来候て候や
被遣候*5哉無御油断御
かせき*6候て可然候
□(一カ)御兵糧米何ほとか
相済候哉是又迚之儀ニ
切々御催促*7不被請
様尤候若請取様なと
-------------
[      ]候を
可出候念を入候て可進之候
一、是御陣替も可為進之候
諸事御由段有間敷候
此表ニ被残置仁躰誰
ヲのこし候哉少々不入御
人数なとハ御国本迄
先へ被遣候て可然候哉
惣別奥口之儀ハ御勝
手たり候間人質之
しゆり*8城ニ被請取候
御才覚なとも御一人と
御かせき尤候是左様ニ
可参も(闕字)内府様*9
ありきもを御とり給シ
御心も付申間貴殿と推
量候様躰ニより今晩以
委細可申候恐々謹言
 七月廿五日   清興(花押)

 

 

(書き下し文)

 

ひとつ、今日は申し承らず候、よって上様明日御成と申し候、ただし気合ほか悪しく候あいだ、今日まで罷り出でず候条、たしかの儀は存ぜず候、


ひとつ、指出ことごとく出来候て候や、遣わされ候や、御油断なく御かせき候てしかるべく候、

 

ひとつ、御兵糧米何ほどかあい済み候哉、これまたとてもの儀に、切々御催促請けられざるよう様もっともに候、もし請け取るようなど[      ]候を出すべく候、念を入れ候てこれを進らすべく候、

ひとつ、この御陣替もこれを進めさすべく候、諸事ご油断あるまじく候、この表に残し置からる仁躰、誰を残し候や、少々入らざる御人数などは、御国本まで先へ遣わされ候て然るべく候や、惣別奥口の儀は御勝手たり候あいだ、人質の修理、城に請け取られ候御才覚なども、御一人と御かせきもっともに候、これ左様に参るべくも内府様に歩きもを御とりたまいし、御心も付け申す旨、貴殿と推量候様躰に候あいだ、今晩委細もって申すべく候、恐々謹言、

  なおなお申すにおよばずそうらえども、いづれのこと

  も御失念なきよう専一に候、以上、 

 

 

(大意)

ひとつ、今日は承っておりませんが、上様は明日御成りです。ただ健康状態が思いのほか悪いので、今日までお伺いできなかった件、確実なことは申上げられません。


ひとつ、指出はことごとく済ませましたでしょうか、それとも検地役人を遣わされましたでしょうか、いずれにしてもご油断なくお働きになることが、ようございましょう。


ひとつ、御兵糧米の確保はどのくらいお済みでしょうか、これまた重要なことですので、たびたび上様の御催促を請けられぬようにしてください。もし催促を請け取るようなことでもあれば[      ]を出してください。入念に行ってください。

 

 

(以下「その2」へ)      

 

 

*1:佐竹(東)中務大輔義久

*2:秀吉

*3:気分、健康状態

*4:在地土豪国人領主の申告にもとづく検地

*5:役人を在地に派遣して行う検地

*6:仕事に励む

*7:秀吉による催促と思われる

*8:「修理」人名か

*9:織田信雄