国立公文書館発行の『アーカイブズ』69号にも和宮下向の文書が掲載されているので、前回との関連で読んでみることにしたい。
なお「明治維新150年記念」に関する各県の取り組みの解説がいくつか掲載されているが、読み応えがあるものは福島県のものだった。
「戊辰150年」における福島県歴史資料館の取り組み―収蔵資料展「村人たちの戊辰戦争」を中心に― | 国立公文書館
大名領の飛び地や旗本領、幕領が散在していることについて一般向けの歴史書で述べられることは稀であるが、畿内や関東ではよく見られる「非領国」の典型である*1。現代まで問題となっている県境争いなどもこれに端を発するケースもあるので、無視できない。したがって国持大名領など「わかりやすい」事例ばかりでは、戊辰戦争の全体像は理解できないという主張は首肯できる。
そのほかにも興味深い論点が提示されているので、興味のある方は一読されたい。
今回読んでみるのは、こちらの写真2「御触書之写」である。
群馬県立文書館 テーマ展示1「上州の幕末・明治維新-150年前のふるさと-」について | 国立公文書館
御触書之写
和宮様(闕字)御下向之節御旅館前後共
御旅行里数三日路程御用之外旅人
往来差留可申事
御道筋宿村并枝道閑道*2共右ニ准し
厳重ニ行届候様可被取計候
右之通可被相触候
右之通従(平出)
公儀被(闕字)仰出候間被得其意御領分
村々大小之百姓并寺社*8江も不残様
可被相達候以上
九月十六日 御代官四人様御印*9
右村々*10名主中
(書き下し文)
御触書の写
和宮様御下向の節、御旅館前後共、御旅行里数三日路程御用のほか旅人往来差し留め申すべき事
御道筋宿村ならびに枝道・閑道とも右に准じ留め切り、御領はそのところの御代官、手附・手代ども差し出し、私領は領主・地頭より家来差し出し、御警衛厳重に行き届き候よう取り計らるべく候、
右の通りあい触れらるべく候、
右の通り公儀より仰せ出でられ候あいだ、その意を得られ、御領分村々大小の百姓ならびに寺社へも残らざるようあい達せらるべく候、以上、
(大意)
御触書の写
和宮様が江戸へ下向される節は、宿の前後ともに御旅程の三日間は、公儀の御用をのぞき旅人の往来は禁止すること。
御道筋にあたる中山道はもとより、枝道・抜け道とも右の規定に準じ往来を禁じ、幕領はその幕領担当の代官の手附や手代を、私領は大名・旗本の家臣を差し出し、警護を厳重にするようご手配下さい。
右の通り、知らせるべきこと。
右の通り公儀より仰せがありましたので、よく理解し、幕領の村々の大小百姓や寺社へも残ることなく、知らせるようにすること。
大名や旗本が警備のために家臣を差し出すのは、参勤交代と同様軍役負担である。
なおこの文書のキャプションに「請書」とある。請書とは、拝命しましたという旨の文言と署名捺印があるものをいう。