一、何事によらす、百性めいわく*1仕儀あらば、そうしや*2なしに、めやす*3をもつて、にわそせう*4可仕候、如此申とて、すちなき*5事申あげ*6候ハゝ、きうめい*7のうへ、けつく*8其身くせ事たるへく候間、下にてよくせんさく*9申て可申上候事、
(書き下し文)
ひとつ、何事によらず、百性迷惑つかまつる儀あらば、奏者なしに、目安をもつて、庭訴訟つかまつるべく候、かくのごとく申すとて、筋なきこと申し上げそうらわば、糺明の上、結句その身曲事たるべく候あいだ、下にてよく詮索申して申し上ぐべく候こと、
(大意)
ひとつ、理由を問わず百姓が困窮するようなことを蒙ったならば、取次者を通すことなく、目安を持参して、越訴しなさい。このように申したからと言って、筋違いの訴訟をしたならば、よく調べた上で、訴え出た者を曲事とするので、村でよく調べた上で訴え出なさい。
「下にてよく詮索申して」とあるように、村が下請団体として機能していたことが分かる。団体として機能するためには、それだけの読み書き能力が村にあったことを前提とする。
また、「奏者なしに」とあるように、代官の非違を代官やその手代などに訴え出ても、黙殺されることがしばしばあったのだろう。そのような場合は直接訴え出る「庭訴訟」という手段をとるように指示している。
その一方、「筋なきこと申し上げ」る者も頻出したのだろう。