日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

永禄9年10月20日米田貞能奥書を読む???


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https://www.yomiuri.co.jp/photograph/news/article.html?id=20180803-OYT1I50017

 

 

右一部明智十兵衛尉高嶋田中

籠城之時口伝也      本ノ奥書如此

此一部より沼田勘解由左衛門尉殿大事

相伝於江州坂本写*1

  永禄九 拾 廿日   貞能(花押)

  ニキリクタシ     留度時

 一、ハヅ 一、イワウ       水ニテ手ヲヒヤシ

 一、カンキャウ 一、カンセウ   カンセウヲセン

                  ジテ手ヲアラ

                  ウ也

 

(書き下し文)

右一部、明智十兵衛尉、高嶋田中籠城の時口伝なり、 

              本の奥書かくのごとし、

この一部より、沼田勘解由左衛門尉殿大事に相伝し、江州坂本においてこれを写す、

  永禄九 拾 廿日   貞能(花押)

  ニギリ下しとめたき時

 一、ハヅ 一、硫黄       

 一、カンキャウ 一、甘草   

 水にて手を冷やし、甘草を煎じて手を洗うなり、

 

 

記事では「沼田勘解由左衛門」とあるが「沼田勘解由左衛門尉」のあやまりである。「門」のなかに丸らしきものが見えるのが「尉」である。

 

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  いずれも「左衛門尉」 東京大学史料編纂所データベースより引用

 

 

2018年8月8日加筆

こちらのブログで、医学、薬学についてご教示いただきましたので、ご参照いただければさいわいです。

mituwhis.blog.fc2.com

 

 

「カンキョウ」は現在の漢方でも使われている乾姜/干姜

「ハヅ」は、天正九年の「外療新明集」P41に「スイハ」という物の別称として「ハヅ」

 

 

とのことです。「クタシ」を腹下しのように読んだのは誤りのようで、皮膚病や寄生虫の治療法のようです。

2018年8月11日加筆
沼田勘解由左衛門尉は「永禄六年諸役人附」に「詰衆番衆」の「二番」とある。

 

 

*1:数文字削除の跡あり