一、何たる儀によらす、よ*1の村の百性はしり*2、当村へまいり*3候をかゝへ*4候ハゝ、そのやとぬし*5の事ハ申ニおよバず、地下中くせ事*6ニせしむへき間、かねてそのむね*7を存、よの村の百性かゝへ申まじき事、
(書き下し文)
ひとつ、何たる儀によらず、余の村の百性走り、当村へ参り候を拘えそうらわば、その宿主のことは申すにおよばず、地下中曲事にせしむべきあいだ、かねてその旨を存じ、余の村の百性拘え申すまじきこと、
(大意)
ひとつ、いかなる理由があろうとも他村から欠落した百姓を庇護下に置いたならば、その者に宿を貸している者はもちろん、村全体を曲事に問わせるので、あらかじめその旨をよく理解し、他村の百姓を置いてはならない。
欠落(かけおち)する百姓があとを絶たなかったようだ。理由の如何を問わず、他村へ逃亡することを禁じ、逃亡先の村でも決して宿を与えてはならない、村全体を罰するとしている。
個別に村から逃亡することを「欠落」「退転」と、村全体で山などに逃げ込んで要求を通そうする行為を「逃散」と呼ぶ。