一、田はた*1さくしき*2の儀ハ、此さき御けん地*3の時けんち帳*4にかきのり*5候者のさばき*6に*7つかまつり、人にとられ候事も、又むかし我かさくしきとて、人のをとり申事もちやうじ*8の事、
(書き下し文)
ひとつ、田畠作職の儀は、此前御検地の時、検地帳に書き載り候ものの捌きにつかまつり、人に取られ候ことも、また昔我が作職とて、人のを取り申すことも停止のこと、
(大意)
ひとつ、田畠の作職については、先年の御検地の時に検地帳に記載された名請人の扱いとする。人に取られることも、あるいは「昔は自分の作職だった」と主張して他の百姓の田畑を取り上げようとすることも禁止する。
これはすでに紹介した「九ヶ条」と同様、検地帳に記載された名請人に作職が属するという規定である。
しかし、こういった文書はあくまでも政策意図、政策基調を明示したものであって、必ずしも意図したようになるわけではない。まして、現実の姿を描いたものでは決してない。ただ、実態をまったく無視した荒唐無稽なものというわけでもない。
したがって、ここで禁じられているような、作職をめぐるトラブルは当然見られたであろう。