文書のタイトルが「西郷家万留」とあるように、竪冊にさまざまな文書を書き写したものであろう。綴じ穴があり、また折り目もあることから、冊子体であったことは明らかである。
しかし、この画像は一紙ものであるかのようで、撮影にあたって「特殊な交渉術」を用いた可能性も…
なお、この文書は写である。
(竪帳から1丁抜き出した竪紙)
沖永良部嶋江
遠嶋 御小姓與
大島吉之助*1
右者御吟味之訳有之、徳之嶋江被遣
置候処、猶又①被(闕字)聞召通*2、趣有之
右之通*3被処遠嶋候、
右申渡飛船等取仕立、差越候儀共
先例を以可致取扱旨、徳之嶋代官江
申越、②左候而著船之上、囲入*4被仰付候条、
昼夜不明様両人番付*5ニ而召置不締
之儀無之様詰役候、兼而*6気を付
罷在候様*7、沖永良部嶋代官江申越
可承向*8江も可申渡候、
七月 但馬
(書き下し文)
沖永良部嶋へ遠嶋
御小姓組
大島吉之助
右は御吟味のわけこれあり、徳之嶋へ遣わされ置き候ところ、なおまた聞こし召されとおり、おもむきこれあり、右のとおり遠嶋に処せられ候、
右申し渡し飛船などとり仕立て、差し越し候儀とも、先例をもって取り扱いいたすべき旨、徳之嶋代官へ申し越し、さそうろうて着船のうえ、囲い入れ仰せ付けられ候条、昼夜明かざるよう両人番付にて召し置き、締まらざるの儀これなきよう詰役候、かねて気を付けまかりあり候よう、沖永良部嶋代官へ申し越し、うけたまわるべき向きへも申し渡すべく候、
下線部①では「貴人の仰せの通り、事情があり」と遠島を命じた理由が明らかにされていない。
下線部②は、船が沖永良部島に着いたら、時を移さず牢に押し込め、昼夜を分かたず、つねに番人を置くべし、と命じている。