日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

西郷どん(24)「地の果てにて」 「西郷家万留(よろずどめ) 沖永良部遠島書付」を読む???

 

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文書のタイトルが「西郷家万留」とあるように、竪冊にさまざまな文書を書き写したものであろう。綴じ穴があり、また折り目もあることから、冊子体であったことは明らかである。

 

しかし、この画像は一紙ものであるかのようで、撮影にあたって「特殊な交渉術」を用いた可能性も…

 

なお、この文書は写である。

 

 

(竪帳から1丁抜き出した竪紙)

 

沖永良部嶋江
遠嶋       御小姓與
          大島吉之助*1
 右者御吟味之訳有之、徳之嶋江被遣
 置候処、猶又被(闕字)聞召通*2、趣有之
 右之通*3被処遠嶋候、


 右申渡飛船等取仕立、差越候儀共
 先例を以可致取扱旨、徳之嶋代官江
 申越、左候而著船之上、囲入*4被仰付候条、
 昼夜不明様両人番付*5ニ而召置不締
 之儀無之様詰役候、兼而*6気を付
 罷在候様*7、沖永良部嶋代官江申越
 可承向*8江も可申渡候、
  七月   但馬

 

(書き下し文)

沖永良部嶋へ遠嶋

       御小姓組
          大島吉之助
 右は御吟味のわけこれあり、徳之嶋へ遣わされ置き候ところ、なおまた聞こし召されとおり、おもむきこれあり、右のとおり遠嶋に処せられ候、


 右申し渡し飛船などとり仕立て、差し越し候儀とも、先例をもって取り扱いいたすべき旨、徳之嶋代官へ申し越し、さそうろうて着船のうえ、囲い入れ仰せ付けられ候条、昼夜明かざるよう両人番付にて召し置き、締まらざるの儀これなきよう詰役候、かねて気を付けまかりあり候よう、沖永良部嶋代官へ申し越し、うけたまわるべき向きへも申し渡すべく候、

 

下線部①では「貴人の仰せの通り、事情があり」と遠島を命じた理由が明らかにされていない。

 

下線部②は、船が沖永良部島に着いたら、時を移さず牢に押し込め、昼夜を分かたず、つねに番人を置くべし、と命じている。

 

 

*1:西郷吉之助

*2:「国父」である島津久光がおっしゃるとおり:闕字があるので身分の高い人の命令とわかる

*3:冒頭に書かれている「沖永良部嶋江遠嶋」を指す

*4:せまいところに閉じ込めること

*5:ふたりの番人をつける

*6:その一方で

*7:見張り役につねに監視させたうえ、注意を怠らぬよう

*8:命令を受ける立場の者、つまり島民