多摩郡久米川村*1
宝暦元年 名主 作右衛門(印)
未十二月 組頭 浅右衛門(印)
同 伝右衛門(印)
同 又兵衛(印)
同 武兵衛(印)
同 権兵衛(印)
百姓代 藤右衛門(印)
同 宇兵衛(印)
表紙に「村鑑明細帳」とあるので「年貢取立ての記録」というテロップは誤り。
(竪帳:表紙ウハ書)
「
一、米壱俵四斗入*4ニ而売買仕候、
一、御用金*5拝借仕候者無御座候、
一、御関所御当番等無御座候、
一、大木無御座候、
一、組分之村方ニ者無御座候*6、
一、困窮之村方ニ無御座候、
一、近村へ道法田無村江三里、府中へ三里、所沢へ壱里余、
一、御城下川越江五里、箱根御関所へ廿四里、駒木根御関所*7江拾里御座候、
一、温泉無御座候、
一、近国ニ名山・高山無御座候、相州大山江拾八里、
冨士山江四拾里御座候、
右者村柄様子御尋ニ付*8書上ケ候処、少茂相違無御座候、以上、
宝暦四年戌十月
(書き下し文)
一、米一俵、四斗入りにて売買つかまつり候、
一、御用金拝借つかまつり候ものござなく候、
一、御関所御当番などござなく候、
一、大木ござなく候、
一、組分けの村方にはござなく候、
一、困窮の村方にござなく候、
一、近村へ道のり、田無村へ三里、府中へ三里、所沢へ壱里余、
一、御城下川越へ五里、箱根御関所へ二十四里、駒木根御関所へ十里ござ候、
一、温泉ござなく候、
一、近国に名山・高山ござなく候、相州大山へ十八里、冨士山へ四十里ござ候、
右は村柄様子*9お尋ねにつき書き上げ候ところ、少しも相違ござなく候、以上、
武蔵国多摩郡久米川村・野口村周辺図
領主、ここでは幕府直轄地なので幕府が、村の様子を尋ねた際に答えた文書の「扣」(ひかえ)であり、原本は幕府側にわたっている。「控」は後世に写し取った「写」と異なり、原本とほぼ同時期に書かれたもので、現代でいえば領収書でおなじみのカーボンコピーにあたる。ちなみに電子メールの「CC」はこのカーボンコピーの略号である。
追記 2021年8月5日
1.村明細帳などの名称は古文書調査合宿に参加する際のガイダンスレベルに属する初歩的知識である。
2.当該自治体史史料編に掲載されている蓋然性が高く、原文書を放送する前に翻刻されているかどうか口頭で確認できる。帝都ゆえ蔵書が充実した図書館がいくらでもあるはずで、その文化資本=アドバンテージを生かし切れていないところが実に歯がゆい。
3.村鑑や村明細帳とは村の概要を記した文書で「直接」年貢取立には関係しない。本放送の通りなら、村勢要覧や「地球の歩き方」、「ミシュランガイド」で徴税作業ができることになってしまう。映画「マルサの女」をご存じないらしい。
4.映し出された部分に「年貢」という文言も「取立」という文言もなく、何か予断を持って臨んだか幻覚を見たとしか思えない。あるいはフィクションだったのかもしれない。
5.全体的に手抜きで不誠実で失礼極まりなく、「どうせわかるはずもない」と高をくくっている態度が露骨である。もう少し手の込んだ「偽装」をした方がよいとさえ思えてくる。
「おもてなし」をするホスト/ホステス役としてゲストを上機嫌にすることが、アナウンサーの仕事だという考え方があるらしい。この点でAIに代替不可能だという主張である。その顰みに倣えばアナウンサーはプロフェッショナルとして忠実に職務を果たしているといえ、ミルグラム実験を彷彿させる番組でもあり、そういう点でも興味深かった。