日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

西郷どん 第20回「正助の黒い石」 安政6年11月5日誠忠組宛島津茂久直書

 

 

茂久公有志士へ与ル書
 方今世上一統動揺不容易時節ニ候万一事
 変到来之節者(闕字)順聖院様御深志ヲ貫
 キ以テ国家奉護天朝ニ可抽忠勤心得ニ候
 各有志之面々深相心得国家之柱石ニ相立
 我之不肖ヲ輔不汚国名誠忠ヲ尽呉候様偏
 ニ頼存候仍而如件
 安政六年己未十一月五日    
          源 茂久(花押)
   誠忠士之面々江

 

(書き下し文)

 

  茂久公こころざしある士へ与うる書
方今世上一統動揺容易ならざる時節に候、万一事変到来の節は順聖院様御深志を貫き、もって国家護りたてまつり天朝に忠勤をぬくべき心得えに候、おのおの有志の面々、深くあい心得え国家の柱石にあい立ち、われの不肖をたすけ国名をけがさず、誠忠を尽くしくれ候よう、ひとえに頼み存じ候、よってくだんのごとし、

 

*順聖院様:島津斉彬

  

*我之不肖:自分の未熟なところ

 

*国名:島津家の名誉

 

*源茂久:島津茂久(忠義)

 

(大意)

  

昨今世の中は動揺し容易ならざる時節です。万一事が起きたなら亡き斉彬様の深いお志を貫き、「国家」をお守りし、朝廷に忠節を尽くす所存です。それぞれ有志の者どもは、深くこのように心得え「国家」の基礎となるよう、自分の未熟なることを補佐し島津家の名誉をけがさず、忠義を尽くしてくれるよう、ただただ頼みます。以上。