教訓がましい話をするとき、よく引用されるのが上記の格言である。こういう格言を好むひとは世間に多いようであるが、いったいどの程度の範囲に言及した言葉なのだろうか。可視化してみた。
「為さねばならぬ何ごとも」については全称命題にあたるので、単純化した。「為さねば成らぬ」の代表例が「宝くじは買わなければ当たらない」というものだ。
この図から明らかな点は、この格言は努力や行動の結果「失敗」のやむなきに至った場合、「意図せざる結果」を招いた場合、および「果報は寝て待て」のような「棚からぼた餅」のケースに言及されていないことである。つまり考え得る4通りのケースすべてに目配りされていない点で不十分な経験則にすぎないということになる。
結論は「成らぬはひとの為さぬなりけり」であるが、これは図の最下部に示したとおり、「為せば成る」の対偶であり、「為せば成る」が真ならば真となるが、「為しても成らぬ」の失敗のケースを無視している点で判断しかねることとなる。