日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

日葡辞書に見える「忍び妻」「四民」「士農工商」

 

 

これに触発(?)されて日葡辞書を開いてみたら、面白いものが見つかったのでここに記しておきたい。

 

シノビヅマ(忍び妻)

人がこっそりと、秘密にもっている妻、すなわち、情婦(772頁)

 

 「秘密にもっている妻」を「すなわち、情婦」とするのはカトリック的な価値観がそういわせたものだろう。ただ「忍び妻」の存在が容認される社会だった可能性はある。

 

シノゥコゥシャゥ(士農工商

サブライ、ノウニン、ダイク、アキビト 

貴人、農民、大工および商人(772頁)

 

中世末期「士農工商」という呼称はあったようだ。ただ、こういった呼び方があるからといって、ただちに身分呼称であるといえないし、まして身分制度があったとはいえない。単に職能的な呼称とも考えられる。制度と実態は常に異なるからだ。ただ後世、この言葉がある制度を呼び習わすようになったことは十分考えられる。

 

シミン(四民)

ヨッツノタミ(四つの民)すなわち「シ」「ノ」「コ」「ショ」(士農工商

サブライ、ノウニン、タクミ、アキウド(士、農人、工、商人)

身分のある武人と兵士、農民、職人、商人 (767頁)

 

士農工商」とくらべると「大工」が「工」=タクミと呼ばれるほかは大差ない。

 

気になるのは「身分のある武人」と「兵士」が分けられている点だ。「兵士」はあまり身分が高いとは言えない存在だったようだが、それ以上はわからない。