日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

歴史学における人物史について 増田四郎『歴史学概論』(191~192頁)から

 

ある歴史的事象に対して内面的な興味をひきおこすという場合、われわれの最も身近かに感得しうる対象の一つは、ある具体的な個人の伝記であろう(「伝記」に傍点あり)。個人の伝記というものは、社会事象とは異なり、感情移入の切実な点で、われわれをひきつける特殊の能力をもっている。そこで歴史の研究にはいる場合、伝記への興味からはいるということも、たしかにナチュラルな一方法である。

 

しかし伝記は、一見地所を超越した絶対的興味をふくむがごとくであるが、真に正しくその人の個性と活動の意義を理解するためには、どうしてもその人の生きていた時代の背景を把握しなければならない。(中略)

 

その時代を具体的に知るという意欲によって、二流、三流の人の伝記にも向けられなければならない。例えば、中世における名もない商人の伝記を断片史料によって再構成してみるというような仕事も、大いに必要なことである。(赤字による強調は引用者)