日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

西郷どん紀行(14)で紹介された文書を読む

 

年月日未詳差出人請取人不詳の文書

 

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水戸宰相殿御弟*(闕字)松平
七郎麿事被遊(平出)
御世話一橋家相続被(平出)
仰出一橋領拾万石其侭
可被遣(平出)
思召ニ候此段御内意可申達旨
被(闕字)仰出候

 (以下記載なし)

 

(書き下し文)

水戸宰相殿御弟松平七郎麿のこと、お世話遊ばされ一橋家相続仰せ出でられ、一橋領十万石そのまま遣わさるべき思し召しに候、この段御内意申し達すべき旨仰せ出でられ候、

 

*水戸宰相:徳川斉昭、「宰相」は「参議」の唐名

 

*弟: 長子でない子、特に末子

 

*(闕字):闕字というには字間が詰まっており、さりとて通常通りに書いたというには隙間がある。微妙なところだ。作成者がわからないのでいかなる立場から敬意を表しているのかわからないが、「松平」から平出にするのが自然と思われる。

 

*松平七郎麿:徳川慶喜、「七郎」は七男

 

*一橋領:大名などの領地は史料上では「領」「領知」、幕府直轄地は「御代官所」、旗本領は「知行所」などとあらわされることが多い。

 

*思召:作成者がわからないのでなんともいえないが、おそらく公儀の「思し召し」と思われる。