日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

年月日未詳古野与五右衛門宛岡部十左衛門書状を読む???

 

以下の記事に掲載された文書を読んでみる。

 

www.shinmai.co.jp

www.hokurikushinkansen-navi.jp

 

 

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写真は後者を使用した。なお、右端に綴じ紐が見える。もともと別々に作成された文書を、のちに何らかの利用目的で綴じられた文書を「綴」(つづり)と呼び、あらかじめ冊子体として作成された「冊」「帳」などと区別する。「綴る」という行為は現在のファイリング、あるいはPC上でのフォルダへの分類と同じである。ただし「分類」は同時に元の状態を乱すことと同義なので、のちのちの検索に必ずしも役に立つわけではない。

 

この2つの記事はひとつの「綴」の、別々の書状を見て書かれている。差出人が「佐藤兵部」、「岡部十左衛門」と異なっているからだ。

 

 

一、大坂七日八日之首尾
有まし伝言候、物語申候
にて互ニ失念も有之歟、
無覚塚之由、被預御状候、
少も無失念、其時分迄
御家中縁勘定、其外ニも
古奉輩衆御咄置申ニ付
何共失念有之間敷候、

 

(書き下し文)

ひとつ、大坂七日八日の首尾あらまし伝えもうし候、物語り申し候にてたがいに失念もこれあるか、おぼつかなきのよし、御状預けられ候、少しも失念なく、その時分まで御家中勘定により、そのほかにもいにしえの奉輩衆お咄し置き申すにつき、なんとも失念これあるまじく候、

 

*無覚塚:無覚束「おぼつかなし」

 

*御家中勘定:論功行賞のことか

 

*奉輩衆:「朋輩衆」「傍輩衆」、仲間たち