日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

天正7年7月24日小畠左馬進宛明智光秀書状を読む

 

 

明後日廿六、宇津表及行付、至桐野河内着陣候、然者各有其御心得、鋤鍬其外普請道具有用意、至彼表可有着候、人数之事、不寄土民・侍男之類、可被召具候、杣在次第、まさかりを持可被相連候、若雨降候者可為廿七日候、少降候義者不苦候、聊不可有油断候、於様体者以面可申談候、恐々謹言、

 (天正七年)      惟任日向守

  七月廿四日         光秀(花押)

    小畠左馬進殿

         御宿所

        『新修亀岡市史資料編第二巻』35頁

(書き下し文)

明後日廿六、宇津表行(てだて)に及ぶにつき、桐野河内にいたり着陣候、しからばおのおのその御心得あり、鋤鍬そのほか普請道具用意あり、かの表にいたり着あるべく候、人数の事、土民・侍、男の類によらず、召しそなえらるべく候、杣あり次第、まさかりを持ちあい連れらるべく候、もし雨降り候わば廿七日たるべく候、少し降り候義は苦しからず候、いささかも油断あるべからず候、様体においては面をもって申し談ずべく候、恐々謹言、

 

*宇津:宇津城、京都府京北町大字下宇津粟生谷

 

*桐野河内:桐野河内郷、京都府船井郡園部町

 

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               「国史大辞典」より作成

 

*土民・侍男の類によらず:亀岡市史ではこのように中黒点を入れているが本ブログでは「土民・侍、男の類によらず」と読んでみる。

 

*杣:杣人のこと。木を伐り出すことを生業とする者。

 

*苦しからず候:さしつかえない、都合は悪くない。

つまり「小雨決行」という意。

 

(大意)

明後日二十六日に宇津城方が策略を行おうとしているので、桐野河内に着陣しました。おのおの注意し、鋤鍬そのほか用意した普請道具を宇津城へ持ってきてください。動員の件は、土民・侍の身分に関わらず、男は誰であっても、連れて来るようにしてください。杣人がいたならば、まさかりを持参させてください。もし雨が降った場合は二十七日に延引すること。少しの雨なら二十六日に着陣するようにしてください。少しも怠りなく、状況によっては直接会って話し合いましょう。