天正10年3月25日前田利家が検地を行った史料として以下の文書が紹介された。
合四拾九町九段六十九歩 惣高
此内
四拾町三段百十八歩 田方分 上中下御定
七町九反大九十九歩 畑方分 弐町六反九□
壱段六十歩 屋敷分
壱町四段大卅三歩 田畠荒分
但四拾三町半九歩 田畠屋敷 定高
此俵千弐百九十壱俵壱斗七升弐合五勺
此外
拾七町七段余 長不作有之
天正拾年三月廿五日
林久右衛門尉(花押)
神野孫右衛門尉(花押)
「段」の単位に「大」「半」などの文字が見えるが、360歩=1段(反)なので、3分の2である240歩を「大」、2分の1である180歩を「半」、3分の1の120歩を「小」と呼ぶ、中世以来の単位を使用している。
村の合計高は49町9反69歩としているが、これは石高でなく面積である。もともと「高」は数量の総額を意味していたので「惣高」が石高とは限らない。ここでは村の総面積という意味になる。
(記載内容)
内訳は 田 40町3反118歩
畑 7町9反339歩
屋敷 1反60歩
荒廃地 1町4反273歩
年貢賦課高 43町189歩
これを俵数に換算すると1291俵1斗7升2合5勺となる。
このほかに、永年不作地として17町7段余ある。
年貢賦課高が43町あまりであるのに対して、荒廃地が1町4反、それとは別に「長不作地」つまり耕作放棄地が17町あまりというのは、かなり疲弊した村であると思う。
1升は1.8リットルなので1勺は18ccとなる。番組では前田利家の計算の細かさを好意的に解説していたが、取られる百姓側からはたまったものではない。ちなみに「勺」の下には「才」という単位もあり、実際年貢量が才単位で書かれている文書もある。1.8cc単位のレベルになる。
石高で村高を表す方法はまだ登場せず、また面積の単位も360歩=1反でありかつ「大半小」という中世の方法を踏襲している点は注意したい。